タカラヅカ、100年続く華麗さに秘められた姿 年功序列とスターシステムを両立できた理由
「生徒力」とは一般企業の言葉で言い換えると「人材育成力」であり、「作品力」とはいわば「商品開発力」といえるだろう。つまり、タカラヅカの100周年は「人材育成力」と「商品開発力」をひたすら磨き続けた結果である。
「人材育成力」を一言でいえば、「スターシステム」と「学校システム」の両立である。一般に日本の企業で「成果主義」は根付きにくいといわれるが、これを真逆の「年功序列」と並存させることで見事に「成果主義」を成り立たせているのがタカラヅカなのだ。
「スターシステム」による成果主義とピラミッド構造
タカラヅカには公演を上演するカンパニーとして花・月・雪・星・宙の5組が存在するが、各組に男役のトップスターとトップ娘役がそれぞれ1人ずつ「組の顔」として君臨している。宝塚大劇場と東京宝塚劇場の公演では、トップスターが必ず主役を演じ、トップ娘役がその恋人や妻などを演じる。
その下に、通称「二番手」と呼ばれる次期トップ候補がおり、主人公の親友あるいは恋敵などを演じる。フィナーレのパレードでは、トップスターの次に立派な羽根を背負って下りてくる。時期によっては複数の「二番手候補」がしのぎを削るときもある。その下には、未来のトップスター候補たる期待の若手スターや、トップ路線ではないけれども歌やダンス、芝居に秀でたメンバーなどがいる。さらにその下に、研1生から始まる若手がおり、お芝居で民衆をやったりショーでラインダンスを踊ったりする。
どの組も80人前後のこうしたピラミッド構造となっており、それはさながら平社員→課長→部長→役員→社長と上り詰めていく会社組織のようだ。このスターシステムにおいて、誰がどこに位置するのかは至るところで示される。たとえば、ショーのフィナーレのいちばん最後のパレードで大階段のセンターを下りてくる順番。まず、センターで降りられるのは基本的にトップスター・トップ娘役およびスター路線の人に限られ、「少人数」で「後に」下りてくる人ほど格上で、背負う羽根もだんだん大きくなる。最後から2番目がトップ娘役、そして全員に迎えられて最後に華々しく下りてくるのがトップスターの特権だ。
あるいは、ダンスシーンでの立ち位置、衣装の派手さ、プログラムに掲載される写真の大きさなど、タカラヅカには、意味のない並びは1つとして存在しないといっても過言ではない。これが公演ごとに変わっていくのを見守るのがファンの楽しみなのだ。だが不思議なことに、厳然と存在する「スターシステム」についての概要は、公にはどこにも明文化されていない。公式発表されるのは「トップスター・トップ娘役」についてのみである。
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