誰がアディーレを業務停止に追い込んだのか

懲戒請求者も驚愕、重すぎる「業務停止2カ月」

今回の処分は軽い方から2つめのものだが、一番軽い処分と2番目の落差は大きい。業務停止は期間がたとえ1日であろうと、顧問契約は一度解除しなければならない。業務停止期間が明けたときに元の顧問先が再度契約してくれればいいが、そうでなければ処分前と処分後では事務所の経営状態が大きく変わってしまう。

処分次第では弁護士生命を奪いかねないだけに、慎重にならざるを得ないからこそ時間もかかるわけだが、それが弁護士は身内に甘いという批判を招いているのも事実だ。

懲戒請求者も驚いた重い処分

アディーレも進行中の案件全ての委任契約を解除しなければならないはずで、2カ月もの間の業務停止は事務所経営に深刻なダメージを与えかねない。

各種報道によれば、処分決定当日アディーレは「事実は認めるが、行為と処分の均衡を欠くので、日弁連に審査請求を出す」、つまり処分が重すぎる点に異議を唱える声明を出したらしい。

各弁護士会が決めた処分に不服がある場合、日弁連に審査請求をすることは制度上可能だが、多くの場合、結果が出るまでに相当な時間がかかるので、業務停止期間中に結論が出る可能性は限りなくゼロに等しい。

「万が一結果がひっくり返った場合、名誉を回復できるだけでなく、弁護士会に損害賠償請求をすることも可能になるので、全く無意味ではない」(弁護士会活動に詳しいベテラン弁護士)そうだが、それで経営上のダメージが回避できるわけではないだろう。

そしてアディーレに事件処理を依頼していた依頼者にも混乱が生じている。既にアディーレはウェブサイトを閉鎖、電話にも出ないため、東京弁護士会が設置した電話相談窓口には依頼者からの問い合わせが殺到していることを全国紙が報じている。

「石丸弁護士以外の弁護士には懲戒は下りていないので、弁護士法人として受けた業務をいったん解約し、個人で受任しなおすことは可能」(前出のベテラン弁護士)だというが、この方法を使うのかどうかは不明だ。

アディーレは書面で対応する方針らしく、依頼者に書面が届くまでのタイムラグで混乱が生じている可能性もある。ただ、依頼者に罪はないのだからもう少し混乱を未然に防ぐ方法が何かなかったのだろうかと思う。

所属弁護士、そしてこの事務所への就職が内定していたであろう新人たちにも影響は及びかねない。

それにしてもなぜ、今回は懲戒請求者も想定していなかった重い処分が出たのか。前出の弁護士会活動に詳しいベテラン弁護士は、「弁護士会内の政治的な力学が働いたという説も耳にするが、実際は違うと思う。違法広告を戒告程度で済ませたら、消費契約法や景表法等の消費者保護の問題を弁護士会が軽視していると言われかねない」と見る。

懲戒請求を門前払いした弁護士会、審査をしながら懲戒不相当とした弁護士会は、東京弁護士会の結論をどう見ているのか。ちなみに、札幌、愛知県、兵庫県の3弁護士会は、未だに結論を出していない。

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