誰がアディーレを業務停止に追い込んだのか 懲戒請求者も驚愕、重すぎる「業務停止2カ月」

拡大
縮小

公認会計士や税理士などとは異なり、弁護士は国家資格者でありながら、その職業団体である日本弁護士連合会(以下、日弁連)には、権力から独立した自治権が与えられている。このため、資格に係わる処分権限を握っているのは監督官庁ではなく弁護士会だ。

弁護士は事務所開設地の弁護士会に所属することが義務付けられている。弁護士会は全国47都道府県のうち東京都に3、北海道に4、それ以外の45府県に1ずつ、合計52あり、それらを束ねる組織が日弁連である。

懲戒請求は誰でもできる

問題となったアディーレのウェブサイト。現在はアクセスできない(写真:共同通信社)

弁護士法56条には、弁護士と弁護士法人が弁護士法や所属弁護士会、日弁連の会則に違反したり、所属弁護士会の秩序・信用を害したり、品位を失うべき非行があった場合、懲戒を受ける、ということが規定されている。

懲戒は誰でも請求することができ、手順としてはまず懲戒してほしい弁護士や弁護士法人の所属弁護士会に申立をする。申立を受けた弁護士会は、その弁護士会に所属する弁護士で構成される綱紀委員会を開き、審査すべきかどうかを検討する。

審査すべきという結論に達したら、今度は懲戒委員会を開き、処分の有無及びその内容を決める。この懲戒委員会の委員も、その弁護士会所属の弁護士だ。審査対象の弁護士、懲戒請求者双方から事情を聴取し、現実の裁判さながらに書面で主張と反論を繰り返すので、結果が出るまでにかなりの時間を要する。

懲戒の種類は4つあり、最も軽いのが戒告(口頭注意)である。次が2年以内の業務停止で、期間は数日の場合もあれば、まるまる2年の場合もある。次が退会命令。弁護士は弁護士会に所属しないと業務を行えないので、所属弁護士会から退会命令が出れば、事実上廃業を余儀なくされる。

弁護士という身分は失うが、弁護士となる資格は失わないので、他の弁護士会が登録を許可すれば弁護士としての活動を継続できる。ただ、基本的に退会処分を受けた弁護士を受け入れる弁護士会は存在しない。

そして最も重いのが除名処分だ。退会命令との違いは、弁護士となる資格も処分から3年間は失う点にある。法的には3年経過すれば再登録が可能になるが、除名の実績を知っていて登録を許す弁護士会はまずない。

アディーレ急成長のエンジンとなった過払い返還請求訴訟が、訴えさえすれば100%勝訴する訴訟になったのは、2006年1月の最高裁判決以降だ。この最高裁判決は裁判所が突如、方針転換をして出したかのような報道もされているが、事実は全く違う。

次ページ誰が懲戒請求をしたのか?
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT