公取が調査、クラウドソーシングの曲がり角 安値受発注で急成長してきたが…

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以降は「極端に単価が低い案件は減った」(クラウドワークス)ものの、低単価の案件は今でも少なくない。本来成立しないような案件であっても、駆け出しで実績を積みたいフリーランスや、単に収入の足しになればよいと考え受注する人がいるからだ。

前出の中村さんも仕事を始めた約2年前は、1500文字の原稿を300円で受けた。かかった時間は1時間ほど。手数料(通常、成約価格の5~20%)を差し引くと手元にほとんど残らない。「当時は相場がわからず、紹介料だと思って納得した」(中村さん)。

低単価でも受注する人がいる以上、サービスの運営側は報酬を規制することが難しい。そのことが「高収入を求めるプロ人材は不特定多数への発注を前提としたサービスを使わなくなっている」(湯田健一郎・クラウドソーシング協会事務局長)という事態を招いている。

報酬の底上げに動く企業も出てきた。ランサーズは10月2日、高い技能を持つエンジニア向けに審査を経て実名で登録するサービスを開始。月額報酬50万円以上の仕事のみを紹介する。パソナテックが運営する「JobーHub」も、同社が専門性の高い人材の情報を管理し、ウェブ上で企業とのマッチングを行うサービスを強化する。

法的な整備も必要だ。クラウドソーシングの契約は業務委託が一般的。最低賃金や労働時間など労働法の規制対象外だ。

健全な労働市場にするために必要なこと

労働問題に詳しい東京法律事務所の今泉義竜弁護士は「多種多様な企業が参入しているが法律が整備されておらず、労働者の救済は難しい。法改正や新法での規制を考える必要がある」と話す。

もう一つは、独占禁止法で不当な低価格取引を規制すること。冒頭のように公正取引委員会が調査を始めているが、独禁法を根拠にした個人の救済は例がない。

より健全な労働の場にするため、乗り越えるべきハードルは多い。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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