「日経平均21年ぶり高値」を素直に喜べない 2000年4月に何があったか知っていますか

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消費税率引き上げを「凍結」して、「増税したうえで使途変更」の自民党との差をつくったのは希望の党側の戦略成功かに見えたが、安倍首相に、ベーシックインカムその他の政策を並べているが「財源を示していないのは無責任だ」と突っ込まれた小池氏は、「企業の内部留保に対する課税など」と、既存の硬直的な財源論にやすやすと引っ張り込まれて、しかも、筋の悪い増税案を示してしまった。

官僚に吹き込まれた首相も、税の理解がない小池氏もNG

増税のタイミングは十分なインフレ率になってからでいいし、個別の支出や減税に対応する「個別の財源」が「同時に」必要だという硬直した財政運営は、環境に適応したマクロ経済政策の妨げになっている。

アベノミクスの主唱者である安倍首相はこのことをよくわかっていてよさそうなものなのに、増税好きの官僚に政策を吹き込まれた政治家がほかの政治家を批判するときに使う「財源がないのは無責任だ」という個別財源論のテンプレートで小池氏を批判したのはイタかった。

「増税の可否は、その時々の経済環境によって異なります。現在、2019年に増税が可能になるような経済運営を目指していますが、決定の時期には、当然のことながら私は改めて可否を判断します」とでも言うと、よかった。

また、すでに法人税を払った後の利益の処分は、最終的には株主が決めたらよく、これを社内に蓄えているからといって(注:必ずしも現預金の形ではない)、課税対象にするというのは、構造として二重課税だし、企業経営の自由度を損ないかねない。もともと日本の法人税率は高すぎることが問題なのだし、企業にさらに課税しようという内部留保への課税は愚策だ。

一方、ベーシックインカムは、そもそも既存の社会保障を置き換える形で徐々に進めることができるし、また、追加的な財源を増税で賄うことが案外容易なのだ。なぜなら、ベーシックインカムが支出されていることによって、国民全体の担税力が拡大するからだ。問題は、財源の有無ではなく、誰からいくら、どのように税金を取るかも含めて総合的に決まる、富の再分配の適切性にこそある。

希望の党が、ベーシックインカムに前向きであることは、大いにプラスに評価したいが、党首の小池氏のベーシックインカムに関する理解には不安が残る。ベーシックインカム自体は、優れた政策だし、各種の議論に耐える。小池氏のような卓越した弁舌能力を持つ政治家が深く理解して論戦に臨むなら、ベーシックインカムは、ほかの政治家には手がつけられない強力な武器になるのではないかと思うだけに、少々残念だ。

なお、経済指標はいずれも当面好調だが、東証1部全体の益利回り(株価に対する1株利益の利回り)である6%強の水準は、現在の長期債券利回りがほぼゼロであることを思うと「適正」というくらいのレベルだが、日銀が利回りを抑え込まずに自然に形成される長期金利を考えると「すでにやや割高」だろう。

直ちに「危ない!」というのではないし、長期投資なら上げても下げても持ち続けていていいレベルの割高なのだが、今後しばらく上昇が期待される日経平均を、「少し冷ややかに眺める」くらいの冷静さを投資家は持っていたい。

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