仮想通貨の新規公開は一体どこが危ないのか ICOは中国では全面禁止に、日本の規制は?

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ICOのメリットは、起業したばかりのベンチャー企業や個人が煩わしい手続きなく簡単にインターネット上で資金調達できる点にある。想定されるのは、ベンチャーキャピタルから資金提供を受けるずっと前のフェーズ。起業後、親類や篤志家などから最初の資金を調達する際に該当する。手軽に資金調達できれば、起業にトライする層が広がるため、経済成長にもプラスになる。

ただ逆にいえば、手軽さを享受するために、実際には厳しい規制を受ける投資型のICOは「日本では事例がない」(金融庁)状況で、購入型や寄付型のICOが広がりを見せている。また購入型といっても、ホワイトペーパー(目論見書)で将来、資金提供者が得るベネフィットを必ずしも明確にうたっているわけではなく、実際には資金調達者はほとんど義務のない状態で資金を手にすることができる。

裏付けがないのに値上がり期待が膨らむ

こうしたやり方を助長する背景もある。資金提供者側の姿勢だ。折からのブームで仮想通貨の価格が数倍~十数倍にもなり、にわか億万長者が出現。こうした投機ブームのさなかで行われるICOでは、資金提供者の大半は新規仮想通貨の将来の値上がり益を狙っている。

建前では購入型のICOは将来の何らかのベネフィットを約束しているが、資金提供者にとってそんなことは二の次で、新規仮想通貨の値上がりだけを期待している状況だ。また、ICOのプラットフォームを運営する企業は仮想通貨取引所を兼営し、新規仮想通貨の取り扱いも行って、資金提供者に法定通貨への「出口」を用意している。

ネット上では、「ICOで資金調達した企業が成長すれば、トークンは信用が高まり、価値が向上する」といったことが流布しているが、そうなるとは限らない。購入型や寄付型のトークンは、株式とは違い、配当がないだけでなく、議決権を通じて経営に関与したり、企業財産の分配を請求したりする権利もない。こうした権利があるからこそ、株式はその企業の将来収益フロー予想を基にその価値(価格)が形成されているが、仮想通貨は単にみんなが買うから自分も買うというだけで、価値の裏付けとなるものは持たない場合が多い。

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