鉄道メーカー世界2位と3位が統合する事情 IoTや新技術の波に日本勢は対応できるのか

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シーメンスがサウジアラビアのリヤド・メトロ用に製造した車両(記者撮影)

シーメンスとアルストムの統合話は3年前からくすぶっていた。当時、アルストムは鉄道専業ではなくガスタービンなどエネルギー事業と鉄道事業が経営の2本柱だった。だが、業績悪化によりエネルギー事業の売却を決断、米ゼネラル・エレクトリック(GE)やシーメンス、三菱重工業らによって争奪戦が繰り広げられた。

シーメンスは同社の鉄道事業をアルストムに譲渡する代わりに、アルストムのエネルギー事業を取得するという提案を当初行っていた。一方、GEはガスタービン事業の現金買収を主体とした案を提示。現金が欲しかったアルストムはGE案に乗り、鉄道専業メーカーとして再生した。

さて、アルストム争奪戦では自社の鉄道事業を手放す案を打ち出したシーメンスだったが、翌2015年には一転、現在業界4位のボンバルディアの鉄道事業を買収するといううわさが株式市場を駆け巡った。

ボンバルディアはカナダの航空機事業とドイツを本拠とする鉄道事業の2本柱で構成される。航空機事業は業績不振だがカナダの”国策”でもあり手放すことはできない。そこで航空機事業を守るため鉄道事業の売却に踏み切るというのが市場の観測だった。この統合話は、両社が即座に「その事実はない」と発表し、いったん打ち消された。

ボンバルディアが合流する3社統合案も?

アルストムの燃料電池列車「コラディア・アイリント」(記者撮影)

シーメンスとボンバルディアの統合話は今年4月に蒸し返され、夏ごろには統合間近と伝えられた。ところが9月に入ってシーメンスとアルストムが急接近。結局シーメンスが選んだのはアルストムだった。ただ、シーメンスのジョー・ケーザー社長は、アルストムを選んだ理由について、会見で明かすことはなかった。

結果としてボンバルディアが世界の合従連衡の動きから取り残された形となったが、このまま孤立することはなさそうだ。中国中車はボンバルディアの買収にかねて関心を示している。シーメンスとアルストムの統合にボンバルディアが合流する「3社統合」もありえぬ話ではない。

アルストムとボンバルディアはフランス、ベルギー、カナダなどで共同事業を行う仲だ。3社連合なら規模の面でも中国中車に対抗できる。3社の統合について問われたアルストムのラファルジュCEOは「現時点でやるべきことが多く、ほかの可能性についてすぐに取り組むつもりはない」とだけ答えた。言葉どおりに解釈すれば、2社統合が落ち着いたら、3社統合の検討がありうるということだ。

では、シーメンスとアルストムの統合によって、日本の鉄道車両業界にも再編の波が訪れるのだろうか。

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