国交省「びっくり提案」に鉄道業界が猛反対 官民で食い違う「オールジャパン」の寒い実態
「オールジャパン体制で鉄道インフラを輸出する」という安倍晋三政権の号令のもとで、世界各地で鉄道案件の発掘が行なわれている。そんな中、日本のODA(政府開発援助)が活用され、受注確実のはずだったフィリピンの首都・マニラを走るLRT「軽量路面電車」1号線延伸計画の入札が不調に終わった。入札の最右翼とされていたメーカーに、新たな車両を製造できるだけの設計や生産の余裕がなかったためだ。
案件を探す国や政府関係機関と、生産を担う車両メーカーの間で連携が取れていないという実態は、"鉄道「オールジャパン」のちぐはぐな実態”でも書いたとおり。こうした問題を打開すべく、国土交通省は鉄道事業者や車両メーカーにヒアリングを行ない、今後の方向性についてレポートをまとめた。ところが、ヒアリングの際に驚くべき提案が国交省から出されたという。
国交省が提案した「車両の標準化」
ある鉄道事業者の車両開発担当者がこう明かす。「鉄道業界が協力して車両の標準化を進めてはどうかと言うのです。この提案には驚きました」。
鉄道車両は法令やJIS(日本工業規格)に基づいて製造される。日本鉄道車両工業会が定めるJRISという業界規格もある。現在は国際競争力を高めるために、国内規格を欧州が中心に策定している「国際標準規格」に反映させる取り組みも行なわれている。
こうした状況に重ねるように持ち出された国交省による標準化の提案。鉄道事業者の側では、国交省はかつて国鉄が行なっていたような標準車両の導入を迫っていると受け止めた。
車両製造の歴史を見ると、国鉄が率先して標準化を行なってきた。たとえば1963~1984年の21年間に3447両が生産された「103系」。山手線のような大都市を走る通勤列車として開発されたが、増備が進むにつれ、仙石線や山陽本線などでも走るようになった。
多種多様の鉄道車両を一本化できれば、設計・開発コストの大幅な削減につながる。車両に使用される部品も大量生産できるのでやはりコストダウンにつながる。国交省の提案は、一見理にかなうようにみえる。
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