日本人が知らない「カズオ・イシグロ」の素顔

英国ではどう評価されているのか

5日、電子メールを書いている時に、ノーベル賞受賞の連絡をもらったというイシグロ氏は、軽いジョークをところどころに交えながらBBCのインタビューに応じた。自分がノーベル賞をもらうとは「まったく思わなかった」そうで、「まさか、(こんな)自分がノーベル文学賞なんて、そんな大それた賞を受けるわけがないでしょう」と淡々と語っていた。

最初は「ウソのニュースだと思ったんです。でもBBCが電話をかけてきたから、本当かな、と。僕は古いタチの人間です。BBCの言うことを信じている者ですから」。

「作家としても、人としても謙虚」と、同じ英国人作家のアンディー・マーティン氏はインディペンデント紙に書いている。『日の名残り』が出た頃、出版社で顔を合わせた2人。「この小説、素晴らしいね」と言ったら、即座に「あんなのはまったくたいしたことないよ」と返答したという。

スウェーデン・アカデミーはイシグロ氏を「大きな力強さを持つ小説を通して、世界と結びついているという幻想的感覚の下の深淵を暴いた」作家と評価。アカデミーのサラ・デニウス事務局は、イシグロ氏の作風を、「ジェーン・オースティンとフランツ・カフカ、を混ぜ合わせ、これにマルセル・プルーストを少々入れた」と表現している。

「過去を理解しようとすることに大いなる関心」

デニウス事務局長が「真の傑作」と呼ぶのが『日の名残り』だ。イシグロ氏自身が「4週間で書き上げた」という小説だが、ユーモア小説で著名な「P.G.ウッドハウス風に始まり、最後はカフカを思わせる作品」と絶賛する。

『日の名残り』は1993年にアンソニー・ホプキンス主演で映画化されたが、物語の舞台は1950年代。ホプキンスが演じた執事スティーブンスが語り部だ。スティーブンスの元主人は1920年〜30年代、対独宥和政策を支持した人物だった。その後、ナチスのポーランド侵攻で第2次世界大戦が始まる。

スティーブンスは元主人の行動のあれこれを思い出しながら、小旅行に出かける。昔一緒に働いていた女中頭と再会し、淡い恋の行方も描かれる。

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