「赤信号を平気で渡る老人」への大きな誤解 「老人の困った行動」はボケが原因と限らない
また、高齢者は信号機をもともとよく見ていません。それは信号無視ではなく、「瞼(まぶた)が下がってくるから、信号機が設置された上のほうがよく見えない」「転倒すると寝たきりにもなりかねず怖いので、下を見て歩かないと不安」「腰が曲がってしまうから、信号機はよく見上げないと見えない」など、多くの老化による体の変化が関係してしまいます。
そういった事情を知っていれば、周囲も「歩くのが遅いなあ」「なんで信号無視してるんだ?」といらだつことも減るでしょう。
こうならないための解決策としては、瞼の下がり防止には「目を強くつぶってから強く開けるという運動を、1日10回程度行う」「メークを落とす際は、瞼を強くこすりすぎない」、転倒防止をして歩行速度を速めるには「シルバーカーを使う」「簡単なスクワットで足腰を鍛える」などが解決策の一例となります。いずれも、そんなに難しい方法ではありません。
周囲は、高齢者が信号の近くにいる際には、手助けしたり、車の運転中はスピードを落とすなどができます。
「約束を忘れている」のではない
約束したのに「そんなこと言ったっけ?」と言って、完全に約束を忘れてしまっていることも、高齢者の困った行動の典型でしょう。
もちろん完全に忘れてしまっていることもありますが、これは高齢者に限らず、若い人にもよくあることです。
それよりも約束の話自体、もともと高齢者が聞こえていなかった可能性のほうが大きいのです。
特に、雑音が多い所では非常に聞こえにくくなります。実際に介護施設などでは「何も言われず、食べ物を口に詰め込まれた」と怒る高齢者が後を絶ちません。もちろん介護士は、ちゃんと話しかけてから食べ物を差し出しているのですが、周囲には多くの高齢者や職員がいるためにガヤガヤとしていますし、介護士は同時に多くの高齢者の世話をしているので、面と向かって話していないこともあります。
つまり、なるべく面と向かって話すようにすることで、高齢者にも伝わりやすくなります。大事な用事は、雑音があまりない場所でしっかりと伝えることも意識するといいでしょう。
また、大人数での会話も、高齢者は苦手です。誰が誰に対して話をしているのかがわかりにくく、それが聞こえにくくなることにもつながっています。簡単にできる解決策としては、名前を呼んでから、あるいは肩をたたいてから話しかけるのを心掛けることです。
周囲ができるほかのこととしては、横文字を乱用しないことです。「モチベーション」ではなく「やる気」、「ポジティブ」ではなく「積極的」、「コンセンサス」ではなく「意見が一致する」といった具合に、です。
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