丸井やマルコメが独自アニメでCMを打つ理由 実在人物や有名キャラの起用が抱えるリスク
オリジナルアニメCMの広がりにはアニメ業界の期待がかかる。ビジネスチャンスをにらんでいるのが、デジタルコンテンツ制作会社のジーアングル(本社・東京都渋谷区)だ。今春から、テレビや劇場用のアニメと同じ手法でつくる高品質なアニメを一般企業向けに制作するサービスを展開。企業PRを支援している。アニメCMをつくっている会社としては、業界からはスタジオコロリド(同世田谷区)、スタジオよんどしい(同武蔵野市)などの名前も挙がる。
「テレビ番組作品よりも尺が短く、毎週の放映に追われることなくじっくり取り組めるため、クオリティが高いものをつくりやすい環境が整っています。アニメ制作現場は縦社会の要素が強いのですが、アニメCM市場は始まったばかり。若いアニメーターにとってもチャンスの宝庫になりえます」。ジーアングルでアニメ制作を担当する平田創己さんは言う。
作り手に厳しい環境
アニメ業界はつくり手には厳しい環境だ。日本アニメーター・演出協会が2015年に発表した、「アニメーション制作者実態調査報告書」によると、アニメーターの平均年収は332.8万円。民間給与所得者の平均に比べて2割ほど低い。年収が200万円以下の人が27%にも達する。アニメ映画のヒットなどで潤っているように見えるが実態は厳しく、新たな収益源の確保はアニメ業界全体の課題である。
一方で、業界全体で十分なアニメCMを供給できる体制は整っていない。アニメCMは自由度が高い分、世界観の表現が命。実写CMに比べて製作時間がかかるうえ、より目的にかなったアニメCMをつくるには、ストーリーから絵柄の選定、声優の起用までトータルで行えるレベルの高い制作会社が必要だ。ただし、現在は既存アニメ会社が本業の傍らに行っているケースが多い。
丸井やマルコメのアニメーションCMの評判を見ても、アニメーションCMは単なる「宣伝」にとどまらず、「映像作品」として捉えられ、評価されている側面があることがわかる。アニメ業界の新たな稼ぎの場を増やしていく意味でも、この萌芽を育てていく取り組みが欠かせない。
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