日本人の僕がパレスチナで起業家を募る理由 ガザの若者に未来への展望を持ってほしい
堀:昨年のビジネスコンテストで、ほかにはどんなアイデアがありましたか?
上川路:準優勝したアマルは、昇降用のキャリアーについてプレゼンテーションを行いました。ガザでは、手足をなくした人、あるいはおじいちゃんおばあちゃん、女性など、重いものを運べない人も多くいます。それにひきかえ、電力不足も深刻で、エレベーターが使えず、重い荷物の移送や車いすを利用する人の移動は階段を使用しなければなりません。
そういったものを持ち上げるキャリアーを作りたいと提案したのがアマルでした。それは、日本の福祉機器メーカー「株式会社サンワ」の美澤麟太郎社長から設計、技術面での支援をいただけることになりました。「安全性の面からこういうデザインだと機能しないからこうしたらいいのでは」とか「我々のこのプロダクトを参考にしてみないか。ちょっと使ってみてもいいよ」という形で、今アドバイスを受けているところです。
堀:すごくいいですね。日本企業と、ガザで技術、アイデアを持っている人をマッチングさせるというのは、すごく価値がありますね。
上川路:日本にはまだおもしろい技術や人がたくさんあると思っていて。これを生かさない手はない。日本の企業自身も、アイデアをもらったり、熱意に打たれたりして、そこから生まれるイノベーションっていうのはあると思っています。今は技術提供でしかないところを、ガザの人たちは「パートナーシップに育てよう」という気概を持ってやろうとしています。我々もそれを狙っていくべきだろうなと思ってやっています。
「友達に協力したんだ」という感覚で
堀:なかなか出入りも制限されている中、その女性の方がガザを行き来するというのは大変なのではないですか?
上川路:そうですね、大変です。これは国連のサポートなしには語れません。我々が提携を組んでいるUNRWAが、その出入りの申請をしてくださっていて。UNRWAがイスラエルやヨルダンに対する働きかけを、我々が外務省さんへの働きかけをしています。
外務省でも中東を中心にそういうことを支援したい人はたくさんいらっしゃいますから、日本へのビザの取得などをサポートいただいています。一橋大学のイノベーション研究センターに所属している米倉誠一郎名誉教授・特任教授も、「身元引き受けは一橋大学がやるんだ」と支援してくださっています。力を出し合って実現しています。