日本人の僕がパレスチナで起業家を募る理由 ガザの若者に未来への展望を持ってほしい
堀:当時の思いとしては、「怒り」でしょうか? どういうものが原動力になっていたんですか?
上川路:そういうのも、もちろんあります。でも、同世代で随分活躍している仲間がいたので、「自分にもできることがあるだろう」という思いのモチベーションのほうが高かったです。当時、中米のエルサルバドルの選挙監視のインターンをしたら単位がもらえるというクラスが大学にあり、参加しました。その年がたまたま、イラク戦争が発生した2003年。そこでアメリカ人やヨーロッパの方々がイラク戦争に対して抗議し、実際に大使館の人に話をし、同年代が迫力を持って自分の主張をし、一生懸命社会を変えようとしている姿を間近で見ていたこともあり、「自分にできることは何かほかにもあるはずだ」と思ったんです。
堀:その思いがこういう形で続いているというのは、すごいことですよね。
上川路:諦めが悪いんでしょうね。
喪失した自尊心、でも教育熱心なガザでできること
堀:ただ、ガザの状況も、活動を始められた時と比べると、現在非常に厳しい。改善よりも、やや深刻化した状況で停滞化しているなと思って見ているんですけど。なぜ起業支援が必要なのでしょうか?
上川路:ガザでは、大半の人がおカネをもらっていて。国際機関から援助をもらったり、食料をもらったり、自活するには困っていない。何とか毎日生きてはいける。そこが逆にまずいと思っていて。彼らは、生きていくことはできる。
しかし、例えば、男性であれば子どもにおもちゃを買ってあげたり、奥さんにプレゼントを買ってあげたり、「自分の稼いだお金で何かしてあげられる」という意味での自尊心のようなものが随分失われていっている。飯が食っていけたからといって人は生きていけるわけじゃなくて、未来に対する展望が見えなかったり、自分が一生懸命生きていける自信がなかったりすると、腐ってしまうというところはあると思っていて。そこを根本からサポートできるような支援をしたいと思ったのが、起業支援の理由です。
堀:確かに、僕が現場にお伺いした時も、支援を受けながら生活をすることがいかに自尊心を失わせ、傷つけるか、ということを知りました。支援に頼らないと生きていけないというのは、全くつらい状況ですよね。でも、あのガザの中で起業を支援するといっても、物資も資金も限られている。大変なのではないですか?具体的に、どのように支援をされているのでしょうか?