日本人の僕がパレスチナで起業家を募る理由 ガザの若者に未来への展望を持ってほしい

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上川路:そうですね。物資は限られている、資金は限られている、出入りも十分にできないという状況です。しかし、人を育てていこうという教育熱が非常に高い。40キロ×10キロの狭いエリアではあるのですが、その中に12校も大学があって。識字率も90%を超え、おそらく日本人よりもよほど英語を喋れる人は多くて。

「そういった人たちが何かできないのかな」という思いを常に抱えていた中、欧米のGoogleやイスラム系NGOイスラミック・リリーフが、何とかガザの未来を作っていこうという動きをしていて。そういうものと連携してできることがあるんじゃないかと。それで、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の協力を得て、2016年8月、ガザで初めてのビジネスコンテストを開催しました。

ビジコンから生まれた技術を日本企業とマッチング

:昨年のビジネスコンテストでは、どんなアイデアが見られましたか?

上川路:昨年優勝したマジッドは、足らない建築用資材を作ろうと、石炭火力発電所、あるいは陶器を作る焼き場から生み出される灰を使ってコンクリートブロック「Green Cake」を作る取り組みについてプレゼンテーションしました。23歳の彼女は、大学で土木工学を専攻しています。

今年の3月に昨年のビジネスコンテストでの優勝者、準優勝者を日本に招待。マジッドの作った軽量で安くて強い「Green Cake」を日本に持って来ると、土建屋さんの中では非常に評判がよくて。具体的には、日本の大手ゼネコン前田建設工業の子会社「株式会社JM」の大竹弘孝社長に相談させていただくと、「女性が自分の能力、勉強したことを生かして国づくりをしていこう、しかもそれが土木でということであれば、自分たちがサポートしない理由がない」とおっしゃっていただいて。

マジッドも技術的なアドバイスを非常に喜びました。「こういう組成でやったら、こういう温度でやったら、より品質のいいブロックができる」というアドバイスをいただきながら、今品質を高めていっているところです。

:もう彼女の会社は立ち上がっているのですか?

上川路:彼女の会社は去年立ち上がりました。自分が想像するよりも、彼女ははるかに羽ばたいてくれていて。今はボストンの大学で「イスラエルとパレスチナの学生同士が企業を通じて社会課題を解決する」という3カ月間のコース(短期MBAプログラム)に入って、彼女の作ったブロックがどうすればよりよい形で社会に活用されていくのかということを勉強しています。

デザインに関しても、「デザインのノーベル賞」とも言われる「Index Award 2017」のファイナリストにノミネートされました。残念ながら受賞とはなりませんでしたが、そういった形で世間でも評価する人、応援する人が出てきていて。今、ガザの中で彼女はソーシャルアイコンのような存在になっています。こういう人たちを1人でも増やしていくことが、ガザの人たちを勇気づけられる、大事なことなのかなと思っています。

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