「上がり過ぎた米国株」の下落が始まる時 「選挙前は上昇」の日本株神話も今回は微妙
日本の選挙はさておき、このところ大きな動きがあったのは、米国の税制改革案の発表だ。本コラムでは、これまでのドナルド・トランプ大統領の体たらくや、財政赤字の拡大を警戒する議会共和党との調整難航から、減税案は極めて小規模なものとなり、米国株価や米ドルの下落を引き起こして、日本株の悪材料となる、と予想してきた。だが、実際には、予想以上に踏み込んだ税制改革案であり、見通しを全く誤った。当コラムの読者の方には、心よりお詫びしたい。
税制改革案が出ても、米国の株価上昇速度は限定的
9月27日(水)に公表された、大統領と議会共和党指導部による、税制改革案のポイントは、次の3点だった。
1)連邦法人税を、現行の35%から20%に引き下げる(大統領が主張していた、15%への引き下げよりは小幅だが、25%辺りまでしか引き下げられないのではないか、と筆者も含めて見込んでいたのに比べれば、大幅な引き下げ)。
2)個人所得税の税率を、現在の7段階から3段階に簡素化し、最高税率を39.6%から35%に引き下げ。
3)海外からの米国企業の資金還流については、今後海外であげる利益分については、原則無税(過去の利益を蓄積した分については、ある税率〈未定〉で1回課税)。
ただし、こうした踏み込んだ減税案に対して、米国株価や米ドルの反応は限定的であるように感じられる。S&P500指数やナスダック総合指数は、先週過去最高値を更新し、ニューヨークダウ工業株指数も最高値に肉薄してはいるが、株価上昇の速度は、急伸とは言い難い。米ドル相場も、対円で一時1ドル=113円を突破したが、定着できずに終わっている。
市場参加者の声を聞くと、どうも「減税案はよいが、果たしてその通り議会で可決されるのだろうか」との疑念がなお多いようだ。ゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長は、「減税により景気が刺激され自然増収となるので、それで減税分はかなりまかなえる」、と9月28日(木)に語ったと報じられている。
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