まだある!サウジで女性が「できないこと」 自動車運転解禁でも自転車に乗るのはNGだ

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そんなサウジの奥様方の生活の一端を紹介しよう。知人のエジプト人女性が垣間見た奥様たちの日常は、次のようなものだったそうだ。

「高額な洋服を毎週のように買い、高価な化粧品にもカネを出し惜しまない。自宅は部屋がだいたい5室以上はあり、それぞれ2つのトイレやバスがあるのが一般的だ。外出する際には、アバヤを身にまとっているが、いったん家に戻れば、まるでお姫様のようにきらびやかな衣装で過ごしている。家庭にはメイドや運転手を抱えていて、女性陣が家事をやったり、体を動かしたりする必要性はほとんどない。おしゃべりやお茶に興じたり、買い物を楽しんだりするのが日常だ」

自動車運転解禁に対して男性は?

あるサウジ女性は、知人女性にこんなことを言ったという。「なんでそんなに家事に精を出したり、子どもの送り迎えをしたりしているの。メイドを雇って、もっと人生を楽しまなきゃ」

知人女性は家庭教師を務めていたが、子弟の甘やかせぶりにも驚いたという。帰宅する際に子どもの母親に、「お子さんが予習、復習をちゃんとするようにお願いしますね」と言ったところ、「まだ子どもなのよ。そんなに苦労させる必要はないし、子どもたちは遊ぶのが仕事なの」とまったく意に介す様子はなかったという。

サウジでは実のところ、貧富の格差も広がっており、このような恵まれた奥様方ばかりではないことも事実。運転手を雇うための費用がかさみ、生活に苦労する人もいる。女性による運転の解禁は、こうした立場の弱い女性に手を差し伸べるとともに、男性の保護の下で安住する恵まれた女性にも意識改革を迫る試みとなる。

だが、女性の運転解禁をめぐっては賛成意見ばかりではなく、「女性が信号待ちや駐車場、事故の際に男性と出会うことになる。解禁されても妻の運転は容認しない」とツイートする男性もおり、かなりの賛同を集めた。実際の運転解禁に向け、さらに国民的な論議が盛り上がりそうだ。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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