義務・強制なし、「進化形PTA」の"柔らかい発想" 「来られる人は来てください」方式で成功

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夏休みのプール開放も同様です。受付などの補助作業を保護者が行いますが、当番制(義務)ではなく、手を挙げた人が担当しています(監視は学生バイトを雇用)。それでも今年の8月は、お盆と土日を除いたほぼ毎日、ボランティアの参加があったということです。

親が荒んでいて子どもがよくなるわけがない

筆者は常々、学校の手伝いの人集めはPTAが請け負うのでなく、学校、校長先生が直接、保護者に声をかけるのがよいと思ってきました。なぜなら、そうしないと残念なことに、しばしば強制動員に変わってしまうからです。

たとえ学校側に強制の意図がなくても、校長や教頭先生から「これくらい人手がほしい」と言われた役員は、ほかの保護者に対して「この人数、必ず来てください」と伝え、強制に変換してしまいます。すると末端では、仕事を休まざるをえなくなった母親たちが、ため息をつきながら学校に集まってくることになるのです。

「校長になって保護者とお話しして、やはりみなさん、そういうことで困られているのがわかったんですね。

役員決めもそうです。PTAは子どものためになる有意義なものだとわかってはいても、何時間も沈黙が続いて担当者も困り果て、クジ引きになる。そうすると大体、いちばんやるのがつらい方がクジを引くんです。

僕もそういう場面に居合わせたことがあります。会長のクジを引いたお母さんが困っていたので、そのときは市役所勤務の知り合いの保護者に声をかけて、『悪いけど、かわりに会長やってくれないか』と頼みました。

でも学校は大抵、そういうときに逃げてしまいます。『いや、それはPTAのことだから』と言って介入しません。

だけどそうすると、保護者の人間関係が荒んでいきますよね。つらい人に仕事を押し付けたり、陰で悪口を言い合ったり。大人がそんなことで、子どもたちがよくなるわけがないじゃないですか。だったら校長が介入して、みんながニコニコしてあいさつできる保護者間、地域にしなきゃダメ。

本来はそうやってPTAを変えるのは、PTA会長というのが当たり前の話ですけれど、1年か2年で交代する会長にはできないでしょう。それができるのは、やっぱり校長です」

地域学校共働本部室を案内してくださった若月教頭先生。「民生委員さんがよくここに集まるので、私もお話をしやすくて助かっています」。部屋に置かれたコーヒーマシンも人気の一因だとか(利用者は箱に100円を投入)。(写真:著者撮影)

確かに、そのとおりです。強制的なやり方が定着しているいまのPTAを、数年で交代する役員(保護者)が変えるのはなかなか難易度が高く、また役員が変えようと思っても、校長の同意を得られずに頓挫するケースも珍しくありません。

校長主導でPTAを変えることには異論もあるでしょうが、現実的にはベストなやり方の一つではないかと筆者は思います。

それにしても、こんなPTCAがどうやって実現したのでしょうか。義務や強制をやめ、活動する人は足りるのか? 次回、後編でお伝えします。

(後編に続く)
 

大塚 玲子 ノンフィクションライター

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おおつか れいこ / Reiko Otsuka

主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者)」。著書は当連載「おとなたちには、わからない。」を元にまとめた『ルポ 定形外家族』(SB新書)のほか、『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』(教育開発研究所)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(同)など。テレビ、ラジオ出演、講演多数。HP

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