「上司に相談します」は生産性で見て致命的だ 「生産性が日本の1.5倍」ドイツ人に学ぶ

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日本なら、平気で「なんでこんな条件で契約を結んだんだ。今すぐ、条件を再交渉してこい」と部下の判断を覆すこともあるでしょう。そして、「なんで事前にもっと相談しなかったんだ!」となったりもするのです。これでは上司も部下も生産性が上がりません。

部下に権限を渡せないのは、何かあったときに上司が自分で責任を取るのが嫌なのか、部下をそこまで信頼していないかのいずれかでしょう。それなら、最初から「この金額で決めてほしい」と指示を出しておけばいいだけです。

そういった権限をあやふやにしたまま部下に仕事を任せてしまうと、途中で何度も上司に確認したり、何度もやり直すことになったりして、結果として仕事のスピードを上げるのが難しくなります。

「会議の人数を減らす」だけで

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日本は集団決定をしたがります。

会議が多いのも、1人で決定するのを避けて、大勢で決めたいから。1人で責任を負いたくないという事情もあれば、1人で決めるのを周りが許さないという事情もあるでしょう。社長が1人で決めたら、「ワンマンだ」と批判されたりするのです。

しかし、「そうやって大勢で決めようとすると、とんがっていた意見がどんどん丸くなっていく」と、ある企業の元経営者が語っていました。だからその経営者が社長に就任してすぐに実行したのは、「会議の人数を減らすこと」だったそうです。

意思決定の人数を減らすことは、意思決定のスピードを上げるための最も有効な手段です。

会議の人数を減らすこと自体、各部署から猛反発を食らうのは想像に難くないでしょう。それでも、自分たち以外のカルチャーを学び、一人ひとりが主体的に半歩ずつでも企業カルチャーを変えようとしたら、いずれそれが大きなうねりになって、必ずいい方向に向かっていくと思います。

隅田 貫 メッツラー・アセットマネジメント シニアアドバイザー

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すみた かん / Kan Sumita

1959年、京都生まれ。1982年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、MUFG(旧東京銀行)に入行。3回(計10年以上)にわたるドイツ・フランクフルト勤務を経て、2005年よりドイツ地場老舗プライベートバンクであるメッツラー・グループ(Metzler Asset Management、1674年創業)フランクフルト本社で日系機関投資家を対象とした投資顧問業務を担当。本社唯一の日本人として日独企業風土の本質及びその違いを見る目を養う。20年にわたるドイツ勤務経験を活かし、日独産業協会(NPO)特別顧問として日独経済人の懸け橋として尽力。

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