「上司に相談します」は生産性で見て致命的だ 「生産性が日本の1.5倍」ドイツ人に学ぶ

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もちろん、TPOをわきまえて、大人として言うべきではない発言はしませんが、会議で自分の意見を言うのに、上だから、下だからという理由で躊躇はしません。比較的オープンに何でも言える雰囲気があるのです。

そのようなフラットな組織を持つメッツラー社では、個々の社員のアサインメントがはっきりしているだけではなく、そのアサインメントをこなすために「必要な権限」が与えられていました。

これが生産性を上げるための大事な条件なのです。

仕事のスピードはどう決まるのか

日本ではおなじみの「上司に相談してみます」は、ドイツでの経験ではほとんど聞いたことがありません。もちろん、大きな案件になると自分の一存では決められないことも出てきますが、任された決断を躊躇していては、顧客は言うまでもなく、同僚からの信頼も失います。

日本企業が海外企業と交渉するとき、担当者が即断即決できないために、ほかの外国企業に仕事を取られてしまうことがあるという問題点は、ずいぶん前から指摘されていました。さすがに、それでは負けっぱなしだと気づいた企業は、現場の担当者に権限を与えるようにしはじめているようですが、ほかの国に比べるとまだまだです。

大きな案件で権限を与えるのが難しいのなら、日常的な小さな案件で一人ひとりに権限を与えるところから始めたらいいのではないでしょうか。そうするだけでも、仕事のスピードが格段とアップするかもしれません。

メッツラー社では私も、任された範囲では「いちいち上におうかがいを立てる」ようなことはいっさいありませんでした。経費や対外決済、人事、総務、コンプライアンスなどについては、当然ながら独断を戒められていましたが、日常的な顧客対応などでは、相当な自由度が確保されていたのです。そして、その自由度が、モチベーションにもつながっているのだと思います。

ドイツの会社に勤務して意思決定のスピードが速いと感じるのは、決めるべき人が明確で、決して集団決定が前提ではないからだと思います。

それぞれが自分の責任に照らして決断をためらわないから、意思決定が早いのです。そして、決めて任せたからには、口出しはしない。たとえ「この顧客とは、この条件で契約を結んでほしくなかった」と思ったとしても、最初にそう指示を出していなかったのなら、部下の判断を尊重するしかありません。逆に、部下の決断を覆すようなことをしたら信頼関係が損なわれる可能性もあります。

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