カンボジアの「独裁化」を看過してはならない

日本人が命まで懸けて民主化に貢献した事実

冒頭に触れたように、フン・セン氏が数々の強硬策に打って出ている理由は極めて単純で、政権維持のための反政府勢力の弾圧である。フン・セン政権の不人気は続いているようで、今年6月の地方選挙でも救国党が善戦した。フン・セン首相の危機感は一層、強まったのであろう、ついに野党そのものを潰してしまうとともに、政権に批判的なメディアの口も封じてしまうという最後の手段に出たのである。

事態の深刻さを受けて米国は国民に対しカンボジアへの渡航注意を出した。これに対しフン・セン首相は特に米国に対して激しく批判を浴びせている。ケム・ソカ氏が「共謀」しようとした相手国が米国であるから、抑えがきかないのだろう。

「米国は1970年代にロン・ノル将軍を支援し、クーデターを起こさせカンボジアを混乱に陥れた。その結果がクメールルージュ(ポル・ポト政権)の支配をもたらし、170万人の国民が虐殺された。米国は今また、カンボジアを混乱に陥れようとしている」

「ロン・ノル将軍を支えていたくせに、状況が悪くなると米国民はさっさとヘリコプターで逃げてしまった。今回もそうするのか」

欧米離れが進み、中国・ロシアへ接近するおそれ

ベトナム戦争に代表されるようにインドシナ諸国に対する米国の介入の歴史は失敗の連続だった。

冷戦時代、カンボジアが赤化することを回避するため、米国はロン・ノル将軍を支援しクーデターを起こさせた。その結果、カンボジア国内が内戦状態に陥り、結果的にポル・ポトが支配する暗黒の時代を迎えることになった。当時のカンボジアは人口が700~800万人と言われていたが、ポル・ポト政権はわずか3年余りの支配期間に100万~200万人の国民を虐殺した。特に教師や公務員、医師、資本家らインテリ層の多くが殺害されたといわれている。カンボジアにとって忘れがたい暗黒の時代なのである。

カンボジアの経済成長を支えてきたのは欧米諸国を中心とする貿易や経済援助だった。にもかかわらず外相のプラック・ソコン氏は、「今や西欧の民主主義秩序は衰退しつつある。カンボジアの将来は中国とロシアとともにある」と述べて、欧米諸国に距離をおく対外姿勢を公然と主張している。カンボジアにとって欧米諸国は口ばかり出して何もしてくれない国だとでもいいたいようだ。フン・セン首相は自らの権力を維持するために誤った道を進んでいるとしか言いようがない状況だ。

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