それでも12月12~13日開催のFOMCまでの3カ月弱は政治的イベントもあり、波乱含みとみている。
第1に、10月まではまだハリケーン到来の可能性があり、この数カ月は米国経済の実力をわかりにくくさせる。第2に、従来10月発表のFRB議長人事がいつ発表されるのかが読めない(過去の指名はベン・バーナンキ氏が2005年10月24日、イエレン氏が2013年10月19日)。第3に、12月8日には債務上限引き上げの期限が到来するため、米議会の協議の行方に再び懸念される時間帯がありそうだ。
そして、北朝鮮問題は解決しておらず、地政学リスクは根強く残っているだろう。現時点で、利上げのタイミングを正確に予想するのは時期尚早だ。12月になって経済面の条件と政治的にも環境が整っていれば、12月に利上げができるとみる。
ハリケーン被害が大きかった2005年
9月のFOMC声明文では、ハリケーンについて「嵐による被害と被災地復興は短期的に影響を及ぼすが、過去の経験では、嵐が中期的に経済の方向を著しく変える可能性は低い」と明記された。これまでの「ハービー」「イルマ」「マリア」で終わるなら、7~9月期の成長率を押し下げても、10~12月期には復興需要により、回復するとの見立てだ。
確かに、過去のハリケーン被害が大きかった年も、嵐が金融政策に影響を与えてはいなかった。具体的に、ハリケーンといって筆者がすぐに思い出すのは2005年の「カトリーナ(上陸日8月25日)」だ。当時のFRBの金融政策は、2004年6月から利上げを開始していたが、2005年9月20日のFOMCでは直前に「リタ(上陸日9月18日)」がいても、25bpの追加利上げを決定した。
今年の「ハービー(上陸8月25日)」の被害額は1900億ドルと見積もられ、米国GDP(国内総生産)のおよそ1%に相当する。それでも、先行きの復興が見込まれることから、FRBの利上げの障害にはならないだろう。また「ハービー」は「カトリーナ」より被害額は大きくなったが、人的被害は少なく、危機対応ができたよい事例となった。
トランプ政権にとっては、救済優先のため政府機関を閉鎖することなく債務上限問題の先送りを決められるきっかけになったともいえよう。そして、ハリケーン到来前に比べると、年内の税制改革法案の成立の可能性は高くなったと考えられる。目先は、今週発表予定の税制改革案の概要に注目したい。またヘルスケアの廃案期限を今月末に控え、米議会の動向からも目が離せない。市場のトランプ期待は春に剥落したので、今は何か一歩でも進めば好感できる地合いだろう。
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