「歩行支援ロボット」の最新技術が凄すぎる 「寝たきり」となった人への光明

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歩行器による訓練の様子。この女性は麻酔事故がきっかけで植物状態(遷延性意識障害)に陥り、27年寝たきりだという。この日歩行器を初めて使用する(撮影:梅谷秀司)

アクティブ歩行器は、本体(フレーム)で上体を支えて立位を保ちながら、下肢に装着した“人工筋肉”によって歩行動作を行うもの。本体下部に取り付けられた4つの車輪で、歩行に合わせて前進する。大きな特徴が、正しい姿勢で歩行動作を行え、しかも転倒の危険がないことだ。

これまでに、車いす型と寝台型を開発している。いずれも人がその上に座ったり、寝たりして装具をつけた後、モーターで立ち上げて、立位の姿勢にもっていく。寝台型のほうが、自身の車いすからスムーズに移乗することができるので、介護者の負担が低い。

なお、このアクティブ歩行器に採用されている“人工筋肉”は、1960年代に開発された「マッキベン型」と呼ばれるタイプだ。ナイロンメッシュ生地で覆われたゴムチューブに圧縮空気を注入すると、チューブは径が膨張すると同時に、長さが縮む。人間の筋肉と同様に、伸び縮みにより動力を得る仕組みだ。介護支援型の機器に採用されているほか、人型ロボットなどの技術としても活用されている。

単に歩行が可能になるだけではない

まだ試作段階にあるアクティブ歩行器だが、治験を通し、多くの人に希望を与えてきた。脳性麻痺による左半身まひで、一生寝たきりだと思われた女性が、3年間歩行器による訓練を行ったところ、自らの足で歩けるようになり、3kmのマラソンを完走した例もあるそうだ。この女性の場合、左足は麻痺したままだが、左足をつっかい棒のように使って、バランスをとりながら歩くことができる。「動きのパターンを体が覚えることによって可能になった」(小林教授)のだそうだ。

単に歩行が可能になるだけではない。小林教授によると、「立位による2足歩行」が、機能回復の面で大きな役割を果たすという。足裏を大地につけて歩くということが、全身に振動を伝え、筋肉組織や心肺機能など全身を活性化させる。脳への影響も大きい。

ただし一点、注意しておかねばならないのは、現在のところ、アクティブ歩行器を利用できる人の条件が限られていることだ。まず、立位をとると血圧が下がるので、血圧に問題がない人であること。また、四肢に歩行できる程度の可動域があることも重要だ。

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