日本株は解散総選挙後も上昇を維持できるか 9月は堅調推移でも、高すぎる米国の株価

拡大
縮小

一方、特に日本株に関しては、大きな不安材料を見いだしにくい。企業収益は輸出製造業、特に設備機械や、それを支える機械部品、電子部品中心に堅調だ。先週発表された統計をみても、11日(月)発表の8月の工作機械受注は前年比で36.3%増加し、9カ月連続のプラスを記録した。牽引役は輸出で、受注のうち外需は48.9%増を記録している(やはり9カ月連続の増加)。12日(火)発表の7月の機械受注においては、設備投資の先行指標といわれる、船舶・電力を除く民需は、前月比8.0%増と、4カ月ぶりの増加となった。ただ日本の株価水準全般についても、予想PER(株価収益率)などでみて、割安感はさほどない。年内は、引き続き米国発の世界市場の波乱が生じ、それが日本株を押し下げる可能性を、警戒したい。

総選挙なら与党がほぼ現勢力維持だが年末に向け下落も

国内では、にわかに、28日(木)から開会の臨時国会の冒頭で、安倍晋三首相が衆議院を解散し10月に総選挙が行われる、という観測が広がっている。

現状では、野党第一党の民進党の不人気は変わらず、離党者も増えている。また、自民批判票の受け皿となりそうな、「小池新党」については、10月だと国政選挙に本格対応するだけの態勢は、整うまでには至らないかもしれない。

とすれば、安倍批判層が棄権し、低投票率のなかで与党がほぼ現有議席を維持する、という結果になりそうだ。また、現在は、政府の経済政策が株式市場の焦点になっているような状況ではなく、多くの投資家の目は、企業収益の実態に向かっている。

このため、国政の状況自体が、国内株式市況を大きく揺らすとは見込みにくいが、要注意なのは、海外投機筋の日経平均先物の売買だ。足元ではNT倍率(日経平均÷TOPIX)が大幅に低下している。これは、内外の長期投資家が、企業収益実態の堅調さに着目し、小型も含めて個別銘柄の現物をコツコツと拾っているのに対し、北朝鮮問題や安倍政権の先行きの不透明感から、海外短期筋が日経平均先物を売っているためだと推察している。

北朝鮮情勢については、当面はよくも悪くも変化がないだろうが、10月総選挙といった事態になった場合、選挙結果を巡っての情勢判断から、短期筋が日経平均先物を、買い戻したり売りを重ねたりする動きに出る可能性が高く、目先は経済実態などとは無関係な株価の乱高下が生じることもあるだろう。

こうした情勢判断のなか、目先はリバウンド継続で、日経平均株価が2万円台を維持することはあると考える。だが徐々に年末に向けて、米国株につれた下落相場入りを強めてくるだろう。このため、今週の日経平均株価は、1万9800~2万0500円のレンジを予想する。

なお、今週は、19日(火)~20日(水)に、米国でFOMC(連邦公開市場委員会)が開催される。量的緩和の縮小が決定されると予想するが、金額はすでに公表された内容に沿ったものとなり、市場にとって、本来騒ぐようなものではない。しかし、市場心理が、強気弱気のどちらかに偏っていると、売り買いの「ネタ」にされ、短期的に米国株式市況や米ドル相場が振れる可能性があるため、注意を要したい。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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