駅や列車で深刻化する「キャリーバッグ」問題 通行の邪魔、思わぬ「凶器」になることも
だが、キャスター4輪付きキャリーバッグが2輪のものより優れているか、といえばそうでもない。電車の床に置くと、予想外の方向へと勝手に転がってしまうのだ。
バッグのキャスターの滑りがよいと、電車の床を転がり、他の乗客にぶつかるといったトラブルも実際に起こりうる。思うに、「周りの人々に迷惑をかけないために、体に寄せて引ける」ように作ったはずの4輪付きキャリーバッグが、実は電車の中で転がってトラブルを起こすのでは本末転倒だ。
あらためて4輪キャスターのキャリーバッグを引いている人の動きをじっくり観察してみると、意外な問題が浮かび上がってくる。荷物が軽くて、さほど急いでいないときは鉄道会社などが奨励しているように、体の真横に押すようにして運ぶ。しかし、早足で歩いている人は2輪キャスターのバッグと同様、引きずるような感じとなり、バッグは体の真後ろに回ってしまう。
バッグが視界に入らない人がいる?
国民生活センターが配布している「キャリーバッグによる事故」という資料がある。これには、さまざまな事故事例が書かれており、前述の英国での「困った例」と同様、「前を歩いていた人が急に停止、その人が引いていたキャリーバッグで足を取られた」といったケースがその一例として掲げられている。前の人と同じペースで歩いていて、いきなり止まられてはつまずくのも当然だ。
しかし、同資料で紹介されている「新幹線を降りたとき、前方の乗客のキャリーバッグに右足を取られて転倒した」「繁華街を歩いているとき、隣を歩いていた人が引いていたキャリーバッグがぶつかり、転んでケガをした」といった事例では、バッグを引いている側にまったく過失がないとは言わないまでも、「前を歩く人が引いているキャリーバッグが、ケガをした人の視界に入っていなかったのではないか?」という疑いを感じる。
筆者は日本を訪れたことがある英国人のスミスさん(仮名)からこんな話を聞いたことがある。
「駅構内でしばらく立っていたら、僕のスーツケースに人がぶつかってきて転んだ。あんな大きなバッグになぜ気がつかなかったのだろうか? 通路をふさいでいたわけでもないのに……」
日本人の「周りに目を配る能力」が著しく欠けているとは思えないが、「バッグが足に当たるか引っかかるかしたら、自分が転ぶかもしれない」といった危機意識を感じないのは不思議に思えてならない。
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