au「三太郎」CMが3年目でも飽きられない理由 ディレクターの子ども時代にキャラの原点

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15秒、30秒のCMだけで商品やサービスをしっかりと理解させるのは難しい。だからこそ、「前半は会話劇を楽しんでもらい、商品紹介でなるほど、とつながるように、CMの構造をこれまでと少し変えている」(矢野氏)という。

ディレクターの子ども時代に「三太郎」の原点

毎回おかしみがある会話劇を繰り広げるのは、「浦島太郎」「桃太郎」「金太郎」といった日本の昔話をモチーフにした、個性的なキャラクターたち。このキャラクター設定にも、こだわりが詰まっていた。

三太郎の生みの親は、電通のエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター、篠原誠氏だ。メインの3役のキャラクター設定にあたっては、「桃太郎は正義の味方で健全なイメージから少しやんちゃに、金太郎は力持ちのイメージとは逆に数字に強い理系のように見せ、浦島太郎は亀を助けた善良さを強調して、すごく純情でどこか抜けている存在」に考えたという。

三太郎たち3人のわきあいあいとした雰囲気は、篠原氏自身の子ども時代に発想の原点があるという。「3兄弟だったこと、そして通っていた山の中の小学校で、同級生が男3人だったこと」(篠原氏)という“人生の中の男3人”がベースとなって、三太郎たちは生まれたのだ。昨年、寺田心が桃太郎の幼い頃を演じて、少年時代の三太郎を描いた切ないストーリー「秋のトビラ:三太郎の出会い」篇を彷彿とさせるエピソードでもある。

シリーズのストーリー展開とキャスティングのキーワードは「意外性」だ。かぐや姫、乙姫、鬼、花咲爺さん、一寸法師、そして織姫。新キャラ登場のたびに、ストーリーは笑いと変化と厚みを増していく。篠原氏は「出演者たちの演技がうまくて、CMの仕上がりは書いた原稿の3倍くらいよくなっている」と話す。矢野氏も「本番になるとアドリブが飛び交い、企画時点では想像もしていなかったオチになることがある」と呼応した。

さらに、三太郎シリーズの強みは「歌」だ。浦島太郎役の桐谷健太が歌った「海の声」、AIの「みんながみんな英雄」、WANIMAの「やってみよう」の作詞はすべて篠原氏が担当し、CM発で大ヒットを記録した。特にCMそのままに出演者が歌った「海の声」のフルバージョン動画再生回数は9000万回を超えるほど人気が高い。

一般的に、シリーズCMの課題は、時間の経過とともにマンネリ化して視聴者から飽きられてしまうことだ。しかし、三太郎シリーズは3年目に入っても視聴者を「思わず笑ってしまった」と楽しませ、「まさかの展開(笑)」と驚かせ、「やっぱりauのCMはいつ見ても面白い」と当初からの狙いどおりの反応が寄せられ続けている。三太郎シリーズは “笑えて、泣けて、驚いて、音楽がよくって、楽しみで”、「このシリーズは全部好き」というファンの期待に応え続けているのである。

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