これから減税、DACA(移民救済制度)の代替案など、難しい法案を決めねばならないときに、よりによって共和党の本丸とも言える債務上限問題で民主党案を丸呑みにしているわけですから、共和党議員はもう「怒髪天を衝く」です。実際、今回は3カ月の期限ということで一時的引き上げをしており、この法案はこのままいくと、12月15日には期限が切れてしまいます。
ただでさえ問題山積、そして年末が迫る時点で再びこの問題を扱わねばならない、という状況は、いくら何でも危険すぎます。もしかすると本当に政権が転覆しかねません。
相次ぐハリケーンの来襲でトランプ大統領が焦ったのかもしれませんが、一説によれば共和党自体は来年の中間選挙をにらんで、18カ月の上限引き上げ延長を考えていたようで、そうすれば来年11月の中間選挙後に期限が来るので、債務上限問題を選挙の争点から外すことができるわけです。普通にやっていれば、こちらの方がはるかに「上策」だったと言えます。
そもそもトランプ大統領の振る舞いについては、8月のバージニア州で起きた事件での対応に対してユダヤ系であるスティーブン・ムニューシン財務長官が激怒したとされており、彼の辞任の噂は未だにたえません。もし、これ以上の主要閣僚辞任が続くなら、政権が危機に瀕する羽目になります。
挙句の果てに、予算を取り仕切る行政管理予算局のトップの局長にミック・マルバニーという男をトランプが指名しているのにも、非常に危うさが見られます。なぜ、こんな人選をしたのか、私にはまったく理由がわからないのですが、要するにこの人、ばりばりの「小さな政府」派の人なんです。
「トランプホラー劇場」が最大のリスクに
しかも、「フリーダム・コーカス」と言って、政府が余計な支出をできるだけ避ける、社会保障費など不要、貧乏人は自分の努力が足りないだけだから放っておけ、まして国のおカネを使うなど言語道断、という筋金入りの人々の集まりのグループ創設者!! の一人なんですよ。こんな人が予算を仕切る立場にいるということを考えると、これは普通にダメでしょう(笑)。
日本でも小泉純一郎さんは「自民党をぶっ壊す」、と言って実際には何もできず、一方で本当に壊しちゃったのは民主党(当時)の野田佳彦さんだったわけですが、こうしてみてみるとトランプ大統領は、これで本当に「共和党をぶっ壊す!」かもしれません。
いずれにせよ、こうしてみると、これからの議会運営を考えると前途多難、と言わざるを得ない。果たして、何が起きるのか。目が離せない展開となることは間違いありません。経済面で言うと、ハリケーン・ハービーの影響は免れませんが、それも一時的なもの。若年労働人口が増加していくアメリカでは、経済成長はもう約束されたようなもので、好調なマクロ経済の動向が予想されます。
しかしながら、こういった突発的なトランプ大統領の行動はいかんとも予想しづらく、今後とも市場にとっての最大のリスクは、この「トランプホラー劇場」と言っていいでしょう。12月に再びヤマ場がくるということだけはお忘れなきよう・・・・・・。
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