解散総選挙をするなら「大義名分」はあるのか

自民党の重鎮・山崎拓元自民党副総裁に聞く

――安倍首相の自民党総裁としての任期は来年9月までで、同12月末には衆議院も任期満了になります。民進党の低迷に加え、小池百合子東京都知事とも関係が深い「日本ファーストの会」が国政政党として次期衆議院選に向け態勢を整える前に、首相が解散に打って出るといううわさが、永田町では流れています。9月末から開催される臨時国会開催中の解散の可能性はあるのでしょうか。

安倍総理は、自民党総裁選で3選を果たして引き続き政権維持をするためにも、どこかで解散をしたいと狙っているだろう。だが、本来は、この秋の解散は2つの意味でありえない。一つは内閣支持率の低さと憲法改正問題だ。今の内閣支持率は人間にたとえれば、いわゆる平熱に達していない。平熱は支持率では50%超に相当する。もし、平熱にないような状態で選挙をやって、今よりも議席数を減らしたら、責任問題になるし、総理の悲願である憲法改正ができなくなってしまう。

衆議院は自民・公明の与党で、参議院は改憲勢力でそれぞれ3分の2超の議席を有しているが、仮にいま解散、衆議院選挙となったら改憲勢力で3分の2未満になり、憲法改正の発議ができなくなる。総理がそんなリスクを冒すかどうかだ。

もう一つは北朝鮮情勢だ。解散・総選挙なら約40日間も政治上の空白ができることになるため、今の状況ではできるはずもない。もし、解散総選挙があるとしたら、(北朝鮮への対応や規制緩和改革などを推進するなどという)大義名分をつけるのかもしれないが、来年9月に任期が切れる安倍総理個人のためにほかならない。

安倍首相が憲法改正に踏み込む可能性はあるのか

――支持率の低下で、事実上憲法改正も難しくなったという声も多くあります。

現在、自民党は憲法改正推進本部の体制を拡充(幹部会の人数を9人から21人へ)し、事実上、保岡興治本部長と新たに幹部会のメンバーとなった高村正彦副総裁の2人が中心となって、年内の憲法改正案作成に向け、準備を進めている。提案は(1)憲法9条への自衛隊の根拠規定の追加(2)大学などの高等教育を含む教育無償化(3)緊急事態条項、の3つに絞るとされている。

もし、連立を組んでいる公明党を説得できれば、来年憲法改正の発議は可能になるだろうが、すでに公明党は、憲法9条の2つの項目(第1項=戦争放棄、第2項=戦力の不保持)に、第3項として自衛隊を明記する意味での「加憲」は事実上「NO」と言って、牽制球を投げてきている。

9条の第3項案には、憲法学者の95%が違憲なので反対するといわれている。第2項の「陸海空軍その他の戦力の不保持」とどう整合性をつけるのか、私に教えてほしい。第3項ではなく、「9条の2」として独立させて、「9条の1項と2項は自衛隊の設置を妨げない」などの文言を使い、自衛隊を明記するなどの方法も検討されているが、同じことだ。

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