解散総選挙をするなら「大義名分」はあるのか 自民党の重鎮・山崎拓元自民党副総裁に聞く

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それでも、安倍総理は憲法改正に政治生命を懸けていると言っているわけだから、総理がやれと言えば、高村・保岡の2人は必ずやる。自民党の中を取りまとめ、公明党とも調整し、来年の通常国会の衆参両院憲法審査会に提示する意向を持っているはずだ。

私は、最終的に憲法改正の発議と国民投票はやったほうがいいと思う。ハッキリ言って、今の自民党の憲法改正推進本部が検討している憲法改正案では国民の理解は得られないと思うが、国民投票は総選挙と同時にやったらいい。そのほうが、結論がはっきり出るからだ。

「日本ファーストの会」は早くビジョンを示せ

――小池百合子東京都知事や「都民ファーストの会」は、もし政界再編があるとしたら、その核になれるでしょうか? 小池氏は2003年から小泉純一郎内閣時代に環境大臣を務めましたが、2007年の第1次安倍晋三内閣時代には防衛大臣に就任直後に防衛事務次官人事をめぐり紛糾。結局、その後の内閣改造もあり、在任55日間で防衛省を去りました。「政界渡り鳥」として、一国の宰相候補としての器に疑問を呈する向きもあります。

2007年の防衛大臣就任時は、当時の事務次官にも問題があったとはいえ、慣例の人事手続きを完全に無視したため、自民党の安全保障調査会や国防部会からも事実上袋だたきに遭い、辞めさせられたに等しかった。ただ、あれは今回の稲田朋美前防衛大臣と同じで、小池氏に防衛大臣を任せた安倍首相のミスキャストだろう。

7月の東京都議選直後ほどではないにせよ、小池氏が今、風に乗っているのは間違いないし、やり方によってはあと2~3年力を保つ可能性もある。東京都知事として2020年7月末までの任期まで都知事の職を全うすると言っているが、それはわからない。将来は、小池氏と近い若狭勝・衆議院議員が代表を務める「日本ファーストの会」の政党版の党首となるかもしれない。

――そうなった場合、民進党の一部の議員などが合流して保守中道の勢力を作る可能性はありますが、自民党の中で安倍首相に批判的な勢力まで、そこに合流するほどの力はあるでしょうか? 小池都知事はともかく、その周辺には、現段階でそこまでの風を起こす力は不足しているのでは?

自民党から離党者が出る可能性はゼロではないだろう。そもそも、風は選挙のときにしか吹かない。選挙に出ること自体が風になる。将来的に、小池氏が国政政党の党首として出れば、風が吹くのは間違いない。現時点では、小池氏には風を起こす力がある。

ただ、「都民ファースト」は東京都の都政改革についての最低限のビジョンを掲げたものの、「日本ファーストの会」は現時点では政党として、この国をどうするのかのビジョンを出していない。「日本ファーストの会」という看板だって変わる可能性もある。これから国会議員が集まってくるのだろうが、風を起こせる可能性があるかどうかは、「日本ファーストの会」のビジョンを見てからでないと、何とも言えない。

福井 純 東洋経済 記者

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ふくい じゅん / Jun Fukui

「会社四季報オンライン」編集部長。『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報プロ500』『株式ウイークリー』『オール投資』編集長、「東洋経済オンライン」編集部長、証券部長を経て現職。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本テクニカルアナリスト協会理事

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