人生100年会議、事務局と首相に微妙なズレ そこから建前と本音が透けて見える

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人生100年時代構想会議第1回会合で、同会議の目的と主要テーマが示された。これを要約すると、具体的に取り上げるテーマとしては、すべての人に開かれた教育機会を確保することを重視し、何歳になっても学び直しができるリカレント教育(学卒後の教育)に焦点を当てる。

また教育を担う大学は、これまでの若い学生を対象にした一般教養の提供では社会のニーズに応えられないことから、課題に対応した高等教育改革を併せて検討する。そのほか、新卒一括採用だけでない企業の人材採用の多元化や、社会保障制度を高齢者向け給付中心から全世代型社会保障へ変える改革にも、議論が及ぶものとみられる。

だが、同会合での安倍首相挨拶を見ると、先に触れた資料にある目的と主要テーマとの間に、微妙なズレがうかがえる。

安倍首相は挨拶の中で、次のように論点を整理した。

第1に、すべての人に開かれた大学教育の機会確保を挙げ、教育負担の軽減のため、給付型奨学金や授業料の減免措置などの拡充・強化する方向で議論すること。第2に、社会人の多様なニーズに対応できる受け皿となり、IT人材の育成、実践的な職業教育の拡充を図るべく大学改革を行うこと。それと同時に、リカレント教育を受けた方に就職の道が開かれるよう、人材採用の多元化について産業界に検討を求めること。第3に、全世代型社会保障への改革について、待機児童対策、幼稚園・保育所といった幼児教育無償化の加速、また、介護離職ゼロに向けた介護人材の確保対策を進めること。第4に、これらの施策の実行に伴う財源を検討すること、である。

同会議の配付資料と安倍首相挨拶との間のズレに、建前と本音が透けて見えるようだ(ちなみにこのズレは、安倍首相の思い入れによるものだけでなく、同会議事務局が強く推すことによるものも含まれる)。

大学教育の無償化をやるか、やらないか

1つ目に、すべての人に開かれた教育機会の確保と、両者とも言うものの、配付資料は大学教育に限定していないが、首相挨拶では大学教育の経済的負担軽減に踏み込んだ言及がある。

これは今後、大学教育の無償化を視野に入れていることが垣間見られる。大学教育の無償化を全面的に行おうとすると、当連載の拙稿「こども保険」と「教育国債は、何が違うのかで詳述したが、3兆円強も税財源が追加して必要となる。ここは最もおカネのかかるところだ。それでいて、わが国全体でみたときに、幼児教育より先に、大学教育の無償化におカネを投じることが本当に効果のあるものなのか、確たる学術的な根拠はない。

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