あえて女性専用車両に乗る「男性の言い分」 痴漢に遭う女性の9割は30代以下なのに…
それではなぜ、自腹で乗車賃を支払ってまでこのような運動をしているのか。「明らかに男性差別だから。女性はどの車両にも乗れるのに、男だというだけで乗りたい場所に乗れないなんて、こんなバカな話はない。女性の6割が痴漢被害の経験があるらしいが、加害者は男性全体のほんの一部。それなのに、痴漢を働く男とそうでない男をいっしょくたにするなんて、江戸時代の連座制よりひどい」。
そもそも一般車両に乗る女性がいるかぎり、女性専用車両は痴漢撲滅に役立たない、とも兼松氏は指摘。「車内防犯カメラのほうが、よほど効果があることはすでに立証済み」だという。
また、女性専用車両を利用している女性の中に、痴漢被害回避の目的で乗っているわけではない人が多くいることも指摘している。確かにそのとおりなのだ。
痴漢回避目的以外で乗車する人も?
警視庁が2011年に公表した「電車内の痴漢撲滅に向けた取組みに関する報告書」によれば、被害者の年齢は19歳以下が52.2%を占め、20歳代が36.8%、30歳代が9.0%だという。合計で98%。しかし、現実の女性専用車両には50歳代以上の女性もたくさん乗車している。
この報告書では、痴漢に対する意識に関する男女の違いも明らかにしていて、男性は総じて痴漢を犯罪ではなくモラルの問題と考えている、とある。これは、痴漢をやったことがない世の大半の男性は、痴漢が何をしているか、実はあまりご存じないからなのではないかと思う。
「お尻をさわられたくらいで騒ぐなんて大げさだ」とまで言う人は、今や多数派ではないだろうが、「服の上から掌で臀部をなでる」「服の上から乳房にさわる」程度のことしか想像していないのだとしたら、モラルの問題だと思うのもうなずける。それが不快であることには違いはないが、その程度で怖くて電車に乗れなくなるほど心理的なダメージを受けるわけがないのだ。
現在55歳の筆者も10代の頃はよく痴漢に悩まされた。通っていたのが私立の女子校で、制服はセーラー服。制服が痴漢を呼び寄せてしまうのだ。大学に入って私服になったとたん、痴漢に狙われる機会は激減した。この点については、友人の娘も同じ意見だった。が、今度は露出魔に狙われるようになり、これは30歳代後半まで続いた。
派手な服装、露出度の高い服装をしていると狙われやすいと思っている男性も多いが、筆者の肌感覚では全く逆。騒がれないことが最大のポイントなので、おとなしそうに見える人が狙われるのだと思う。筆者は10代の頃、地味で暗そうでやぼったい女のコだったから、おとなしそうに見えて狙われたのだと思っている。
筆者が初めて電車内で痴漢被害に遭ったのは13歳。中学1年のときだ。場所はセオリーどおりドア付近。ひと晩泣き明かし、しばらくは電車に乗るのが怖かった。
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