ワタミがひそかにステーキ店を開発したワケ 新業態のファミレスに活路見出せるか

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「にくスタ」はほぼ単品商売のため、1人~2人で厨房業務を担うことができる。ランチもディナーもメニューやオペレーションがほとんど変わらないため、従業員の教育が比較的容易で、習熟度向上も早い。

7月にオープンした「にくスタ」の南砂店。狙い通りファミリー層の集客に成功している(記者撮影)

営業時間についても、夕方~深夜にかけて営業する居酒屋とは異なり、「にくスタ」は22時台にラストオーダーを設定したため、従業員は片付けや掃除をしても終電までに帰宅することができる。ピーク時間帯もランチは12時、ディナーは17時半から19時半と予測しやすいという。「ランチ&ディナーの業態のほうがアルバイトの採用もしやすいし、社員の管理もラク」(馬越氏)。

明らかな優位性を打ち出せず

「にくスタ」は南蒲田店で転換前の業態と比べて130%の売上高、オープン間もない南砂店は160%で推移している。「ファミリー向けのレストランを作るという意味では成功」(馬越氏)というのがワタミの評価だ。しかし、現時点では、「にくスタ」が同業他社と比べて明らかな優位性を打ち出せているとは言い難い。

ステーキ・ハンバーグやサラダバーを展開するチェーンは少なくないが、ワタミが最も意識すべきは「ブロンコビリー」だ。ここ数年2ケタ出店をしており、6月末に113店の店舗数を2020年には200店にする計画を掲げる。「にくスタ」の場合、情熱ハンバーグ200gにサラダ&デリカバーのセットはランチで1190円(税抜き)だが、ブロンコビリーも同様の価格帯だ。客単価で比べても、にくスタはランチが1200円、ディナーが2000円ほどで、ブロンコビリーとあまり変わらない。

さらに、ブロンコビリーは専業で、かつ食材加工の内製化を進めているため、収益性も高い。売上高経常利益率は16%弱(2016年12月期)と外食業でトップクラスだ。ワタミの馬越氏は「当社工場は多品種少量生産。コスト的に重い」と話す。「にくスタ」は10月に東京・府中に3号店のオープンが決まっているが、さらなる多店舗展開に向けて越えるべきハードルは低くなさそうだ。

ワタミとしては、レストラン業態の開発を継続し、深夜に営業しない業態の割合を増やしていきたい考えだ。9月末にはイタリアンの新業態を実験出店する計画もある。「にくスタ」を手始めに、レストラン業態を早期に軌道に乗せられるかどうかがワタミの行く末を左右しそうだ。

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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