「かわいげのない人」に100年人生は辛すぎる 予防医学者が教える「幸せな年の取り方」

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学び、遊び、働く。それぞれ異なるわけですから、少なくとも3つのコミュニティに所属することになります。これがいい。人間、本当は1つのコミュニティにずっと所属していたほうが楽なんです。同じ仲間とツーカーで話ができますから。

10月19日、福岡市にて「『LIFE SHIFT(ライフ シフト)』人生100年時代をどう生きるか ~自分らしいキャリアデザインの描き方~」セミナーを開催します。詳しくはこちら(写真:Sergey Cash / PIXTA)

しかし裏を返せば、それは頭を使わずに済むということです。実際、私たちの研究でも3つ以上のコミュニティに属していると要介護になりにくいという結果が出ています。多種多様な人と交わり、いろいろな話をすることで脳が活性化するのです。

もっと言えば、50歳くらいにならないと、ライフワーク、つまり本当にやりたいことなんて見えてこないのではないでしょうか。夏の時期にがむしゃらに働いて、秋に差し掛かった頃にぼんやりとやりたいことが見えてくる。アメリカでは、さまざまな経験を積んで、50歳くらいで起業した人が雇用を支えているといわれています。

人生の黄金期はいつか?

石川善樹(いしかわ よしき)/1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がよりよく生きるとは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。 専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。2017年7月、子ども向け理系絵本『たす』〈白泉社〉が刊行。また近日『思想としての予防医学』が刊行予定。Twitter:@ishikun3(撮影:今井康一)

また、自分が何をしたいのか、どんな人生を送りたいのかを考えるとき、大きく分けて3つの道があると私は思っています。主人公としての道、助っ人としての道、観客としての道です。自分がどの道を行くのかでだいぶ変わってくる。

主人公の道を行くのであれば、「これがやりたい」というビジョンやミッションを周囲に明確に示す必要があります。能力はそんなになくてもいいんです。むしろ周りを巻き込み、引っ張っていく熱意、話術や人としての魅力が大事です。

助っ人の人生というのは、いわば主人公を支える脇役です。ビジョンはないけれど、技術や能力を持っている。企業のコンサルタントをイメージするとわかりやすいと思います。実はこの道がいちばんつらい。ナンバーワンかつオンリーワンの能力なり技術を持っていなければ、壮大なビジョンを持つ主人公の目に留まりません。人一倍の努力を要するわけです。

観客の道というのは、サッカーのサポーターのような存在で、舞台に立つのではなく、舞台に立つ人を応援する立場といえばいいかもしれません。

これらは私の勝手な分類にすぎません。しかし、こうしたモノサシがあれば、たとえば50歳までは自分の専門性に逃げず、助っ人の道を歩んで力をつけていこう、それからは主人公の道を歩もう、といった具合に考えられるようになるわけです。100年人生、だいたい50歳までは修業期間です。

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