「かわいげのない人」に100年人生は辛すぎる 予防医学者が教える「幸せな年の取り方」

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そして最も変えるべきは、寿命に対する常識でしょう。繰り返しになりますが、人生の終わりは80歳ではありません。100年を前提として物事を考える。そして50歳からが人生の本番であり、黄金期であるという点です。その時期を充実させるにはどうしたらいいか。「あの頃は良かったな」という思い出だけで半世紀を過ごすのは、あまりにもったいない。

冬の時代を乗り越えるには「かわいげ」が必要

長寿に関する研究はさまざまにあるのですが、まだ確度が高いものとはいえません。“つながり”以外に長寿の秘訣は今のところあまりないと思ったほうがいいでしょう。では76歳からの冬の時代、“つながり”を保つために何がいちばん必要か。

私は「かわいげ」だと思っています。不機嫌で威圧的でわがままな老人は、周りからも疎んじられますよね。だから、76~100歳までの冬の時期を楽しく乗り越えようと思ったら、男も女も必要なのは「かわいらしさ」なんです。犬は何もしていないのに、人間からかわいがられますよね。だから、「犬を見たら先生と思え」なんです。

演じるのではなく、その人自身の魅力が問われますから、案外難しい。しかしこの時期になると介護の必要が出てきたりもしますから、何かと周りが世話してあげたくなるような人であることが大事です。

予防医学の観点からは、健康のために座りすぎるなとかテレビを見すぎるなとか、ノウハウはいくらでもあるんですが、人生100年時代は、病気予防のために行動を変えるより、感性を磨くことのほうがよほど大事。何がやりたいのか、何が楽しいのか。それらを模索し、かわいいおじいちゃん、おばあちゃんになることを目指す。リンダ・グラットンさんも、60歳を過ぎて「再婚するの」とうれしそうに話をされていて、とてもかわいらしいですよね。

私の専門である予防医学は、基本的に人は弱いという前提に立って物事を発想します。その立場から言うと、人生100年時代、まず「自分でみそ汁ぐらい作れるようになろう」というのが人生戦略の第一歩というわけです。

石川 善樹 予防医学研究者

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いしかわ よしき / Yoshiki Ishikawa

1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。(株)Campus for H共同創業者。「人がよりよく生きる(Well-being)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。 専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。

Twitter:@ishikun3

個人HP:yoshikiishikawa.com

 

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