東大が「東京六大学野球」で戦い続ける意味 9日に開幕、連続最下位から抜け出せるか

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山田は志望理由をこう語る。「高校最後の夏はいいところまでいけると期待されていたのに、西東京大会の3回戦で惜敗しました。それがメチャメチャ悔しくて。もっと上でもやれるんじゃないかという手応えもあったので、強いところでやりたいと東京六大学を目指しました」。

高3夏に受けた模試では東大はE判定だったが、それまで野球に費やしてきた時間を受験勉強につぎ込み、東大と早慶に現役で合格。「東大なら試合に出て、空気を肌で感じられると思って、決めました」と明かした。

浜田一志監督は、東大野球部の出身。新日鉄を経て学習塾を開業、経営者としての顔も持つ(撮影:尾形文繁)

部員の約3分の2は浪人して入学してくる。2012年11月の監督就任から5度、新入生を迎えている浜田監督は「彼らは好きな野球ができる喜びにあふれていますよ」と目尻を下げる。

「新入生はトレーニングで体を作ってから技術的な練習に移っていきますが、浪人して入部してきた場合は、その前に『リハビリ』が必要。受験勉強で体がなまっていて、関節の可動域が狭くなっている。まずはトレーニングをしてもケガをしない体にすることから始めます。個人差もありますが、1、2カ月はかかりますね」

このように他大学とは選手層などの事情が異なるなか、浜田監督は「文武両道はできる。我々が勝つことが、その証明になる」と言葉に力を込める。日本の学生野球界をリードする東京六大学リーグで、日本最難関の大学である東大が勝つ。そのことで学生のあるべき姿を示すのもまた、東大がこのリーグに存在する意義の一つだろう。

日本のトップレベルで目指す「文武両道」

宮台は「文武両道とは自分の限界を試すこと」だと言い切る。「文武の両方で、自分ができることを最大限頑張る。東大野球部はいくらでもそれができる環境にあります。キャンパスへ行けば一番いい教授陣が教えてくれるし、まわりにもレベルの高い学生がいる。神宮へ行けばお手本になる選手がいくらでもいる。ここにいる以上は、東大基準で勉強を、東京六大学基準で野球をすることを目指さなければいけません」。

ただ、勉強も野球も頑張るからといって1日の時間が24時間より増えるわけではない。時間の使い方が大事になる。宮台は言う。「勉強が大事なときもあれば野球が大事なときもあります。優先順位をつけて、気持ちを切り替えてやっています。自分で『頑張る』と決めたことなので。正直、東京六大学で勝つのは難しいし、苦しい。だからこそ勝ったときの喜びは大きい。それは僕らにしかわからないものだと思います」。

山田も思いは同じだ。「東大で勉強でも野球でも日本の同世代のトップクラスの人たちを相手にしている。そのプライドも感じているし、やりがいもあります」。

東大球場のフェンスには、「下剋上」と大書された垂れ幕がかけられていた(撮影:尾形文繁)

そして、山田は秋への抱負を力強く語った。「他の5大学は野球にすべてを懸けている。それは純粋に尊敬できることです。彼らになんとかして勝ちたい。歴史的な背景はあるけど、1勝もできず、勝ち点も取れず、順位争いに絡まなければ『東大が東京六大学リーグにいる意味があるのか?』と言われるのは当然です。個人的には、順位争いをしてこそこのリーグにいる意味があると思っています。なんとしてもチームの結果を残したい」。

東大は9月9日、開幕試合で立大と対戦する。その後は慶大、早大、法大、明大の順で戦う。はたして連敗は止められるのか。そして、勝ち点を挙げることはできるのか。この秋の東大の戦いに、ぜひ注目してほしい。

佐伯 要 スポーツライター

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さえき かなめ / Kaname Saeki

和歌山県出身。スポーツメーカー勤務を経て、フリーライターとして活動。『週刊ベースボール』『大学野球』『ベースボール・クリニック』(以上ベースボール・マガジン社)などの野球専門誌を中心に執筆。

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