ミズノやゼット、野球離れに「球活」で反撃 宿敵同士の野球用品メーカー21社が共闘

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野球・ソフトボール用品の売り上げで、昨今はウエア関連の売上比率が大きくなっている。今の野球選手はユニホーム、練習ユニホームに加えて、グラウンドコート、トレーニングウエアなどさまざまなウエアを着用するようになった。また、応援用のユニホームも売れている。こういう売り上げのウエートが大きい。

これに対し、グラブの売り上げはじりじりと減少しているという。軟式野球だけの数字は発表されていないが、軟式野球用品の売り上げは特に落ち込みが激しいという。これまで小学校、中学校の軟式野球人口が減少していることを紹介したが、メーカーによると成人の軟式野球、つまり草野球の競技人口も減少しているという。

久保田は言う。「今年、高校野球の競技人口が減少に転じました。このまま手をこまねいていたら、野球・ソフトボールは衰退してしまう。その危機感があるのです」。

球活委員会がいま展開しているのは、「野球場へ行こう」キャンペーンだ。

久保田はこう続ける。「NPBや独立リーグ、社会人野球などのチームに入場券を無償あるいは安価でお分けいただき、サイトで応募した親子に配布しています。当面はまずこのキャンペーンを続けます。先日は埼玉西武ライオンズなど、埼玉県内に拠点を置く野球・ソフトボールの4球団が主催する『PLAY-BALL!埼玉』の視察に行きました。こうした幼児への野球普及活動の必要性も感じています。裾野拡大のために、何ができるか考えていきたいと思います」。

実は今、NPBも野球の裾野を広げる取り組みに乗り出している。8月中旬、雨と強い日差しが交互に降り注ぐ蒸し暑い気候の中、岐阜市立中央中学校の体育館には、53人の教員が集まっていた。岐阜県内の小中学校の先生たちだ。これからNPB、日本ソフトボール協会(JSA)共催の「ベースボール型授業研究会」の講義を受ける。

2011年度より全面実施された学習指導要領において「ベースボール型」ボール運動が全国の小中学校の体育授業で必修化された。学校教員は、「ベースボール型」の授業をしなければならない。しかし、20代、30代の中には野球、ソフトボールの経験がなく、ルールはおろか、投げる、打つの基本動作さえ身に付いていない教員も多い。そこでNPBが中心となって、全国の教員に対し、教員向けの「ベースボール型」授業の研究会を開催しているのだ。

学校の先生に元プロが野球の楽しさを伝える

体育館には、NPBと共催するJSA(日本ソフトボール協会)の関係者のほか、中日ドラゴンズとヤクルトスワローズのユニホームを着た元選手もいる。

中日の背番号「24」は、遠藤政隆。主に救援投手として15年間の現役生活で28勝21敗6セーブの成績を上げている。ヤクルトの「26」は河端龍、こちらも救援投手として10年間で13勝14敗6ホールド。2人とも現在は球団職員だ。プロの第一線で活躍した2人の元選手が、小中学校の先生に野球の「いろは」を手ほどきする。

ボールは軟らかいソフトボール大のもの。これを最初は自分で上に投げて両手でキャッチする。キャッチするときには「ぱくっ」と声に出して言う。筆者は小学校低学年、幼稚園児の野球体験教室をいくつも取材しているが、それとまったく同じスタイルだ。転がしたボールのキャッチ、近い距離でのキャッチボール、少し離れてキャッチボール。

なんでもなくこなす先生もいるが、ぽろぽろ取り落とす先生もいる。その後は、ティーを使ったバッティングに。「打つ」となると、経験値の差が如実に出る。ゴルフスイングよろしく、豪快に飛ばす先生がいる一方で、バットにボールが当たらず、ティーの部分をたたく先生もいる。河端講師が、軽妙なしゃべりでわかりやすく解説する。

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