「まず、こういう団体ができたということを野球界の各団体に説明に行きました。ちょうどプロ(NPB、一般社団法人日本野球機構)とアマ(一般財団法人全日本野球協会)が一体となって『日本野球協議会』を立ち上げたばかりだったので、そこへも説明に行き、一定の感触を得ました」。常務理事を務めるエスエスケイ・事業推進本部ベースボール事業部長の安井浩二が続ける。
同じく常務理事のゼット・ベースボール事業部事業部長の長谷川正は意気込みを語った。「『球活委員会』では、一度野球を始めた人が、一生野球にかかわっていただけるように、支援をしたい」。常務理事のハイゴールド専務取締役、風呂本隆史も「まだ始めたばかりですから、手探りですが、業界全体でいろんなことをやりたいと考えています」と話す。
「球活」に参加する野球用具メーカーは、もちろん熾烈な競争を続けてきた。会社同士がライバル関係にあるはずの代表理事と4人の常務理事たち。話を聞いていると、同志的ともいえる気持ちのつながりを感じるが、「球活委員会」が始まるまで、彼らは互いに話をすることはほとんどなかったという。
「野球離れ」に手を組み立ち向かう
小売り現場での拡販、学校、実業団、プロ野球チームへの用具やユニホームなどの納入、さらには有名プロ選手のアドバイザリースタッフ契約の争奪戦――。競合関係にある会社が、「野球離れ」に直面して、企業の垣根を超えて手を組んだ。事態がいかに深刻かが、このことからもよくわかる。
ただ、野球・ソフトボール用品の売れ行きは、数字上は落ちていない。球活委員会によると、野球・ソフトボール用品は、出荷ベースでは横ばい、あるいは微増を続けているという。それだけを聞くと、市場は縮小していないように思える。
しかしそこには、消費動向とは別の要因が大きくかかわっている。近年、「スポーツデポ」「スーパースポーツゼビオ」などの大規模スポーツ小売店の出店が相次いでいるのだ。一方で町の「運動用具店」は次々と廃業に追い込まれているが、それを上回るペースで大規模小売店の出店ラッシュが続いた。
「スポーツデポ」を展開するアルペングループの公式サイトによれば、2012年6月期、「スポーツデポ」は102店舗だったが、2016年6月期では148店舗、最新の情報では150店舗になっている。この種の店舗はおおむね「スポーツ用品のワンストップショッピング」をコンセプトにしている。だから、野球・ソフトボール用品の売り場面積も大きい。
競技人口は減少しているが、こうした店舗が主に開店時にひととおり商品をそろえるがために、野球・ソフトボール用品の出荷額は減ってないのだ。前出の球活委員会代表理事の久保田憲史もこのことを認める。「市場に野球・ソフトボール用品がだぶついているんです。出店が続くかぎりは、出荷量は増えますが、そろそろ出店ペースも鈍ってきました。閉店、退店するケースも出てきています。市場の飽和点が見えてきた感じです」。
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