「新築優遇」主義が中古不動産流通を破壊する 「安心R住宅」制度から見える根本的な勘違い
第2に、「安心R住宅」を取り扱う事業者団体が「汚いイメージの払拭」に関する基準を定めるとしている。これに適合するだけでなく、外装や主たる内装、水回りの現況の写真などを情報提供し、リフォームを実施していない場合は、参考価格を含むリフォームプランの情報を付すこととしている。しかし、こうしたことはすでに現場で行われており、特に消費者の安心が増すものではない。
第3に「新築時の情報」「過去の維持管理の履歴に関する情報」「保険・保証に関する情報」などの開示を義務付けている。しかし、「なし」であっても開示したことに変わりなく、問題がないとする点も非常に中途半端だ。
そもそも発想にセンスがない
ほどなく告示化される本制度だが、「国がお墨付きを与える」というそもそもの発想にセンスがない。これまでに公表された制度設計では、ただ税金を無駄遣いすることになりそうだ。1戸当たり100万円の補助金が切れたら、単にそれで終わりとなる可能性が高い。
そもそも、新築住宅建設を促進しておきながら中古住宅流通も活性化したいという姿勢が間違っているのだと、筆者は考えている。
本格的な人口・世帯数減少が始まるわが国においては、新築が1つ造られれば1つ以上の空き家が生まれる状態だが、新築住宅建設にはありとあらゆる税制優遇措置がある。たとえば、新築の固定資産税減額の特例措置(一戸建て3年、マンション5年)は1964年から50年以上継続しており、もはや特例とはいえなくなっている。
しかし、業界団体は、「これがなくなると新築購入意欲が減るから必ず実現させるべき」と要望を出し続けている。もっとも、少し古いが2011年に総務省が行ったアンケートでは「新築住宅特例が住宅を新築するきっかけとならなかった」と回答した人が80%にも上っており、そもそも新築購入のインセンティブとして働いていない可能性が高い。
ほかにも税金優遇措置がある。住宅ローンを借りると、10年もの間、年末ローン残高の1%が所得税から控除され、確定申告で戻ってくる「住宅ローン控除」をはじめ、「登録免許税」や「不動産取得税」にも軽減措置がある。新築住宅に多額の税金を投入しておいて、中古住宅市場にも税金投入して活性化しようとしても、住宅市場の全体最適化が図られないことは明らかだ。このようなずさんな制度設計では、どんな手を打っても効果は限定的だろう。
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