防衛省・自衛隊の装備調達人員は、少なすぎる 過去最大の防衛予算は工夫次第で圧縮可能だ

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なぜ「計画」が存在しないのだろうか。原因は防衛省・自衛隊の装備調達人員が諸外国に比べて圧倒的に少なく、業務の質も高くないことにある。このために当事者能力が欠如し、調達のあり方が「無計画」にならざるをえないのだ。

たとえば主要装備などの仕様書をメーカーに丸投げしているのは公然の秘密である。競争入札で特定の企業が仕様書を書けば、当然自社に有利な仕様書になる。これでは競争入札の意味がない。また調達されている装備が適正かどうかをチェックする人員もいない。

防衛装備庁の人員は総兵力24万7000人に対して約2000人だ。他国の国防省や軍隊と単純比較はできないが、予算規模や人員の規模が近い英独仏などの主要国の国防省と比べると、人員が1ケタ少ない。

総兵力15万5000人の英軍を擁する英国防省の国防装備支援庁の人員は約2万1000人(対外輸出関連部門はUKTI、通商投資庁に分離統合されたので、実態はさらに大きい)。兵力がわずか2万2000人のスウェーデン軍の国防装備庁ですら3266人を擁している。自衛隊の調達人員がいかに少ないかがわかるだろう。

効率も悪い

人数が少ないだけではない。そのうえ効率も悪い。これは先述のように自衛隊の装備調達が長期にわたって少量ずつ行われるためだ。諸外国が5年ほどで完了する調達を20年かけて行っていたりする。

仮に調達ペースが諸外国の1万人に対して1000人、調達期間が4倍だとしよう。装備調達というものは1個調達しようが1000個調達しようが、同じ人員が拘束される。そのため防衛省の調達人員の生産性は諸外国の4分の1程度になる。つまり1000人の人員は250人しかいないのと同じである。これは10倍の人員の差が実に40倍になってしまう計算だ。

効率が悪いために、東京・市ヶ谷の防衛省、防衛装備庁、内局、自衛隊の各幕僚監部の調達担当者は極めて忙しく仕事をしている。帰宅は恒常的に遅く、防衛省に寝泊まりすることも少なくない。各部隊など地方調達の担当者も同様だ。長時間の過重労働が恒常化している。調達システムに問題があり、生産効率が低いためだ。システムの構造的な欠陥を現場のガンバリズムで支えているのが現状であり、調達システムを見直すような余裕はない。

効率的な調達システムを採用し、調達期間を短縮するだけで、人員を増やすことなく、現在の調達人員を数倍に増やすのと同じ効果を得ることが可能なのである。調達改革を早急に行うべきだろう。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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