「箱根の龍宮殿」が日帰り温泉に変わった理由 目玉は、浴場からの箱根屈指の絶景

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――回遊ルートを変えるという意味では、アクセスが不便なのがいちばんのネックではないのか。

「それは指摘のとおりだ。箱根園までは小田原駅から路線バスはあるものの、渋滞等で時間がかかることが多く、本数も多くない。そこで、今年4月から、小田原駅からの路線バスの本数が多い元箱根を起点とし、龍宮殿、箱根園、ザ・プリンス 箱根芦ノ湖を結ぶ無料循環バスの運行を開始した。元箱根エリアには、箱根観光の大きな見所のひとつである箱根関所跡や、箱根神社もあるので、日帰り温泉と組み合わせた新たな観光ルートを認知していただければと思う。循環バスは、今のところ1時間1本の運行だ」

インバウンドへの対応は?

箱根を訪れる外国人観光客は、年々増え、箱根町の統計によれば、外国人宿泊者は、2014年が21万7000人、2015年が37万8000人、2016年が46万2000人と、噴火のあった2015年も減少することなく、急激に増えている。増えるインバウンドへの具体的な対応について、稲葉氏にきいた。

「インバウンド増については、意識している。3年ほど前から、営業担当者が韓国、台湾の大学などを訪問し、インターンシップで学生に日本に来てもらい、その後、継続してこちらで働いてもらえる枠組みを構築した。現在も、箱根で韓国人、台湾人のスタッフが数名働いており、言語の面で助かっている。

食事処は畳の上にテーブル・いすを置くスタイルにした(筆者撮影)

また、ハード面では、龍宮殿の食事処は、畳の上にテーブルといすを置くスタイルをとり、外国人のみならず、ご高齢で足の不自由な方などにも無理なく食事を楽しんでいただけるスタイルにした。

そのほか、今後、外国人向けに浴衣の着付けや、お茶の点て方、はしの使い方教室などをやりたいという声が、ホテルのスタッフから上がっているので、検討していきたい」

ちなみに、ここ数年の龍宮殿別館およびザ・プリンス 箱根芦ノ湖における、全宿泊者のうちの外国人宿泊者の割合は、以下の数値だった。龍宮殿別館が外国人の割合が増える一方、やや高価格帯のザ・プリンス 箱根芦ノ湖のほうでは微減している。国別には、1位中国、2位台湾というのには、ここ数年動きはないという。

【龍宮殿別館の全宿泊者に対する外国人の比率】
2015年:9.2%
2016年:11.7%
2017年:12.5%
(2017年は見込み)
【ザ・プリンス 箱根芦ノ湖の全宿泊者に対する外国人の比率】
2015年:15.6%
2016年:14.1%
2017年:13.8%
(2017年は見込み)

ネックは交通アクセスか?

国登録有形文化財にもなった由緒ある建物が、「日帰り温泉」という気楽なスタイルで利用できるようになったのは、うれしいことであり、箱根観光の折にぜひ訪れたいという人も多いだろう。

しかし、ネックになるのは、やはり交通の便の悪さだ。無料循環バスが走るようになったとはいえ、1時間に1本では、使い勝手が悪い。現状、龍宮殿を含む芦ノ湖周辺の名所を時間を気にせずに周遊するとなると、マイカーと遊覧船という選択肢が現実的なのではないか。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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