こうみると、保守政党である自民党でさえ、リベラル的な政策を志向することがある。さらに強調していえば、憲法問題や安全保障政策などでは極めて保守的とみられる安倍首相が、財政面ではリベラル的な政策を志向するという、”逆説的”な組み合わせすらも起こりうるということだ。
自民党は歴史的に見て、保守政党でありながら、穏健な革新主義という意味で、リベラル志向の政策を取り込んで長期政権を維持してきた、という見方ができる。1970年代に与野党伯仲となり、一時的に自民党が単独過半数を維持できなくなる事態に直面したことがこれを助長したといえる。
代表的には、田中角栄元首相が「日本列島改造論」を掲げて全国的な交通網を整備し、都市と農村の格差是正に取り組んだり、1973年に「福祉元年」を標榜し、老人医療費無料化や年金の物価スライド制の導入を行ったりした。これらは、まさに「リベラル」である。こうした取り込みもあって、1980年代に保守回帰の動きが強まり、自民党は長期政権を維持した。
有権者の志向もどちらかで語り尽くせない
今般の民進党代表選が「保守」対「リベラル」の一騎打ちで、結局、「保守」の前原氏が新代表になったということでも、民進党が保守政党になるわけではない。他方、安倍政権の自民党も、保守政党を標榜しつつも、リベラル的な政策を加速させようとしている。
自民党でも民進党でもない、”第3極”の勢力を結集する動きもあるが、自民党にも民進党にも属していないことだけが一致点で、政策志向は収束をみていない。政党の立ち位置と政策志向は、まだまだ整理がついていないのが現状だ。
民進党代表選は、わが国の有権者の政策志向が、「保守」対「リベラル」という構図では語り尽くせないことを浮き彫りにした選挙だった、といえるのかもしれない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら