新代表となった前原氏は、代表選の際、憲法改正について安倍晋三首相の考え方とは異なるものの、自衛隊の存在を明記する「加憲」の考え方に立つことをにじませ、国政選挙における日本共産党との共闘に否定的な姿勢を示した。これらは日本では保守的な立ち位置だと理解される。
しかし、首尾一貫して、保守的な考え方に立っているわけではない。前原氏は「オール・フォー・オール(みんながみんなのために)」をキャッチフレーズに、自己責任社会との決別を訴えた。また、教育無償化や介護費用の負担減など、国民にとって受益感のある財政支出に使途を変えることにも言及した。
これらに表れる前原氏の政策志向は、福祉を重視する穏健な革新主義(市場を信用せず公的介入によって所得再分配を行うべきとする立場)という意味で、「リベラル」そのものである。
一方の枝野氏も、代表選の際、自由競争を過度にあおる政治から脱却し、”お互い様”の精神で支え合う仕組みを整えることこそが政治の役割と唱え、保育士・介護福祉士の給与引き上げなど、所得再分配政策に力を入れることを主張していた。この点では、両氏の政策志向は似ている。
安倍首相の政策にも「リベラル」の要素
また枝野氏は、早期の消費税増税に否定的であり、公共事業の見直しなどによって、財源を捻出することを主張した。蓮舫前代表がかかわった代名詞的な政策「事業仕分け」にも表れているように、民進党内には、政府の過度な関与に否定的な見方をする議員もいる。こうした政策志向は、むしろ「保守」的でこそあれ、リベラルとはいえない。
では、ひるがえって、安倍晋三首相の政策志向はどうか。安倍首相にリベラルの政治家という第一印象を持つ人はいないだろう。しかし、当連載の拙稿「安倍改造内閣で『財政運営』はどう変わるのか」でも触れたように、看板政策である「一億総活躍」の実現において、「介護離職ゼロ」を掲げ、保育士・介護福祉士の給与引き上げや待機児童の解消策に着手したり、「働き方改革」を掲げ、残業規制の強化や非正規雇用者の処遇改善、そして官民対話を通じた賃上げ要請などを実行したりした。
これらは、伝統的に自民党政権が力を入れてきた政策とは異なり、むしろ「リベラル」寄りの政策といってよい。
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