今の年金受給者は将来世代に譲歩するのか 「連合」の退職者団体が強硬姿勢から転換
日本の公的年金では、「収支が一致せずに赤字で年金財政がもたない」という意味での破綻は可能性ゼロだ。給付水準が収入に強制的に一致させられていくため、少子高齢化による収支バランスの悪化はすべて給付水準の低下に行き着く。
一方で政府は、老後生活のための年金給付水準の十分性について、所得代替率で5割(標準世帯の場合)を下限と決めている。所得代替率とは、現役世代の所得に対して年金給付がどのくらいになるかを示す指標であり、政府は現役世代の所得の半分を年金給付の下限と考えているわけだ。
2014年度時点の標準世帯の所得代替率は62.7%。今後はこれがマクロ経済スライドによって調整され低下していくわけだが、2014年の年金財政検証では、経済が順調なケースでは将来も50%以上を維持できるものの、低成長ケースでは50%を切るという試算結果が出た。
マクロ経済スライドの発動を阻むもの
では、退職者連合がこれまで堅持を要求してきたマクロ経済スライドの「名目下限方式」とは何か。これはマクロ経済スライドがデフレや低インフレの下では発動されないか、フルには発動されない方式を示している。物価や賃金が上昇しているときであれば、所得代替率が低下しても名目額は減らさないということが可能だ。しかし、デフレや低インフレのときにマクロ経済スライドを発動すると、名目額まで減少してしまうことが起きる。高齢者の生活を配慮して、そうならないように当時、名目下限方式が導入された。
ところが制度改革が行われた後、リーマンショックの影響もあり、日本にデフレ経済が定着する。その結果、物価上昇率や賃金上昇率がマイナスだったり、非常に低かったりする年が続いた。そうした影響により、マクロ経済スライドが発動できない年が続き、年金給付水準の調整は遅れに遅れた。
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