「カラオケの鉄人」、社長解任強行の舞台裏 業績悪化を理由に創業者が後継社長を更迭

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日野氏は「企業価値を上げるために、物言う株主だけでなく、行動する株主になりたい」と話している。

ただ、創業者で筆頭株主という経営に影響を及ぼせる立場にありながら、「新しい経営者にすべてを任せて退いたので、鉄人化計画からの声は意図的に遮断していた。内部の情報はほぼわからない」(日野氏)と主張。経営陣と対話をほとんど行わず、行動を起こしたことを示唆している。

相次ぐ創業家たちの反乱

鉄人化計画以外にも、この数年間で大塚家具や出光興産、大戸屋ホールディングス、そして保育園運営大手JPホールディングスと、創業者と経営陣の対立が表面化するケースが目立つ。

企業の事業承継に詳しい日本経済大学の落合康裕准教授は、「経営環境が変化する以上、創業者に指名された後継者が新規事業に挑戦すること自体は間違ったことではない」と断ったうえで、「鉄人化計画はそのプロセスが急進的過ぎたのではないか」と分析する。

後継の堀氏が社長に就任してから1年間は、創業者の日野氏も会長として並走しており、この間の業績は安定していた。

8月3日に開催された臨時株主総会、大きな波乱もなく1時間ほどで終了した(写真:株主提供)

ところが、社長就任から2年目に入ると変調が生じる。業績予想の下方修正を繰り返すようになる。コンテンツ配信を軸とした新規事業では収益化が遅々として進んでいなかったが、経営方針の軌道修正がされることはなかった。

事業承継が成功した老舗企業では「先代経営者は後継者に異質な意見を述べつつも、試行錯誤を許容するなど、世代間の相互理解を図っていた」(落合准教授)。

いったい鉄人化計画で何が起きているのか。完全に経営権を掌握した日野氏の次の一手に注目が集まる。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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