「カラオケの鉄人」、社長解任強行の舞台裏 業績悪化を理由に創業者が後継社長を更迭

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鉄人化計画は8月期決算のため、定時株主総会は毎年11月に開催される。臨時株主総会を招集するほど、急いだのはなぜか。日野氏はその理由を「収益力や信用力が落ちている。純投資家として悠長なことは言っていられなかった」と話す。

同社の業績は苦戦している。前2016年8月期に10年ぶりに最終赤字に転落。今2017年8月期は第3四半期時点で営業利益段階から赤字となった。会社側は従来の業績見通しを据え置いているが、今期も最終赤字となる公算が高い。

堀時代に業績は急降下した

創業者の日野洋一氏は2013年に社長を堀健一郎氏に譲り会長となったが、2014年10月に辞任している(2012年、編集部撮影)

辞任に追い込まれた前社長の堀氏はエンターテインメント業界の出身。日野氏から引き継ぐ形で2013年に社長に就任。「第二の創業」と銘打ち、エイベックスやセガサミーでの経験を生かして、メジャーレーベルの原盤楽曲・映像の配信やアーティストのプロモーションなど事業の多角化に舵を切った。

同時に財務体質改善に向け、カラオケの不採算店を閉鎖し、新規出店も抑制した。しかし、新規事業を軌道に乗せることができないまま、本業のカラオケ事業も若者のカラオケ離れや他チェーンとの競争激化で売り上げが低迷する事態に陥った。

日野氏は臨時株主総会前に東洋経済の取材に応じ、「(社長を譲って)3期経って業績が持ち上がらないのであれば、定時株主総会で経営陣が代わるというのが普通だが、そうではなかった」と語っている。

新経営陣は鉄人化計画をどう変えるのか。

社長にはならなかったものの、新たに取締役執行役員に就任した生え抜きの滝江成吉・店舗事業本部長は臨時株主総会の場で「旧経営陣は新規事業開発に特化し、カラオケ事業に経営資源を十分に割いていなかった。今後はカラオケにしっかり資源を投入していく」と表明。本業回帰の方針を示している。

同社が9月1日付で行った組織変更では、カラオケ事業の収益力向上のために経営戦略本部を新設。堀前社長時代には抑制されていた新規出店も強化する考えを打ち出している。

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