激売れするミュージシャングッズの仕掛け人 音楽とファッションは最強コンビだ

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「ザ・ウィークエンド」のグッズ(Andrew White/The New York Times)

5月初め、ザ・ウィークエンドの「スターボーイ」関連商品は米国とカナダの8都市のブティックでのみ、3日間に限って販売されたほか、ネットストアでも期間限定で取り扱われた。その後、ブラバードはパックサンを通してもっと大規模に商品を展開した。「文字どおり72時間に限ってこういう機会を作れば、待ってましたとばかり飛びついてもらえる」とバートロッタは言う。

カギとなるのは、期間限定販売で扱う商品はほかでは手に入らないよう徹底することだ。「ニューヨークに行く客はニューヨークで売られる品を求めている。ロサンゼルスに行く客はロサンゼルスのものが欲しい。その後でメインのコレクションが来る。つまりロサンゼルスに行けない人は、数週間後にパックサンの店舗に行けば一般向けの幅広いコレクションが手に入る」とバートロッタは言う。

売れ筋はちょっと昔のアーティスト

期間限定販売が世間の関心を呼ぶカギであるなら、実際に売上の柱となるのは多くの消費者が容易に手に入れられる商品のほうだ。「大衆に物を売るにはつねに関心をかき立てる必要がある」とウォンは言う。「たとえば私は5000ドルのグッチのバッグには手が届かない。それでも700ドルの財布なら買えるし、そのことでそうしたライフスタイルの一端に触れていられる」。

実際、エディティッドによればネット通販で最も売れているのはランDMCにレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ラモーンズのグッズだ。つまり必ずしも今時の人気アーティストとは限らないわけだ。

「このトレンドには、大きな中間価格帯の市場がある」と、エディティッドの上級アナリスト、ケイティー・スミスは言う。「『新しいパブロ(カニエ・ウェストのアルバム『ザ・ライフ・オブ・パブロ』のこと)のTシャツが出たぞ』といった、尖ったものではない。小売業においては、もっと年配でもっと広く知られたアーティストにも大きなチャンスが眠っている。そうしたアーティストの商品はそれほど急速に売れることはないが、非常にいい結果を出している」

実際のところ製品は、特定のアーティストに関連付けられている以外はほかと大して変わりはしない。デザインのバリエーションはあるかも知れないが、アーティストグッズはハイファッションではないし、そのテイストを取り入れた一般向け製品とも違う。違いがあるように感じられるのは当該のアーティストを巡る話題作りの結果であって、それこそが消費者の購買意欲を維持するカギとなる。

「私の日々の課題は『どうすれば店の客足を伸ばせるか』ということだ」とバートロッタは言う。「ショッピングモールの客足が悪かったとする。そこで私たちが、アーティストが関係する『体験』を持ち込むと、小売店側の欲求が刺激されるんだ。もしこれをやらなければ、よその瀕死のモールと同じくわれわれも座して死を待つことになる」。

(執筆:Valeriya Safronova記者、翻訳:村井裕美)

(c) 2017 New York Times News Service

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