「教育困難大学」がPR活動に躍起になる事情 高校に「どぶ板営業」をかけさせられる教職員

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知名度がなく学生募集に苦しむ大学にとっては、オープンキャンパスは自分の大学を直に知ってもらえる唯一の機会といっても過言ではない。表向きは「大学・学部、大学生活の説明」という建前の目的を標榜している。しかし、本音は参加した高校生たちにその大学を志望校の1つとしてもらうこと。入学に至らなくても、少なくとも受験料だけでも得ることできれば、という気持ちがあるのだ。

具体的にオープンキャンパスはどのような形で行われているのか。毎回、午前中に全体説明があり、無料で来場者に提供するランチを挟んで、午後は模擬授業、部活動説明会、施設見学、受験対策、個別相談コーナーなど盛り沢山な内容になっている。とはいえ、どこの大学のオープンキャンパスでも行われている定番の企画ばかりではあるが。

このオープンキャンパスのために、常勤教職員のほぼ全員が出勤させられる。有償ボランティアで集められた学生は、まじめで印象のいい学生が事前に選別されている。彼らは大学側が用意した、そろいのTシャツを着用して待ち構える。参加者に配る資料も記念品も、準備万端、整っている状態で「お客様」である高校生を迎える。

客引きのように説明会場へ誘導を試みる

しかし、参加者は事前の予想どおり少ない。高校生と一緒に来た保護者も合わせて毎回30名から50名といったところである。ラフな服装の保護者が多く、中には乳飲み子や幼児を一緒に連れてきている人もいる。全体説明の会場となったホールは空席が目立つ。午後には模擬授業や施設見学があるが、参加しようとする人はほとんどいない。そこで、出口に向かう参加者を担当教職員が、まるで客引きのように腕をつかまんばかりに必死に引きとめる。これが、冒頭の教員の嘆きの原因だ。

一方、個別相談コーナーでは熱心に大学側担当者と話をしている参加者が少なくない。この場で出る質問は、大学に入って学べることの具体的内容についてではない。「勉強が苦手なのだが、大学に入って大丈夫か」「この大学を出ると就職は大丈夫か」「おカネがないが、大丈夫か」といった、漠然とした不安を訴える質問ばかりだ。

帰りがけに、記念品や、大学名が印刷されたクリアファイルを渡すと、「これだけですか?」と不満げな表情をする高校生もいる。大学によっては、ペンケースやリムーバブルディスクなど、高価な記念品を渡すところもあるからだろう。最近は、多くの高校で、複数大学のオープンキャンパスに参加することを夏休みの宿題にしているから、オープンキャンパスで物をもらうことに慣れてしまっている参加者も少なくないのだ。彼らは、オープンキャンパス時の記念品や学食のメニューで、その大学の資金状況を察知してしまう。

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