乙武洋匡が見たガザ地区の痛ましすぎる現実

失業率40%超、空爆が日常の難民キャンプ

イスラエルのベン・グリオン国際空港から車で1時間ほど南下すると、突如として大きな建物が視界に現れる。イスラエルがガザとの境目に設置するエレツ検問所だ。ガザを訪れる者は、ここで荷物チェックを受け、ガザへの入域目的を念入りに質問される。ガラスの向こうの男性係官はニコリともせず、鋭い眼光をこちらに向けている。広大なスペースに、数人の係官と私たち一行。無機質な空間が、余計に恐怖を募らせた。

巨大な荷物を持ち込ませない仕組みになっている

厳しいセキュリティチェックを終えると、大きな鉄製の回転ドアが待ち受ける。巨大な荷物を持ち込ませない仕組みだ。私は仕方なく車いすから降りて自力で回転扉を通り抜け、車いすは折りたたんで回転扉のすき間から押し込んだ。しばらくすると、また同じ仕組みの回転ドアが現れ、もう一度、同じことの繰り返し。8月の湿気をたっぷり含んだ空気が体じゅうにまとわりつき、一気に汗が噴き出す。

回転扉を抜けると、フェンスに囲まれた1キロメートルほどの道が続く。この先にあるのが、パレスチナ側の検問所だ。このイスラエル側の検問所とパレスチナ側の検問所の間には緩衝地帯が設けられているが、パレスチナ人が無断で立ち入ると、イスラエルの兵士に容赦なく銃殺される。ただ、この緩衝地帯もイスラエル側が一方的に設定したもので、もともとはパレスチナ農民にとっての貴重な農地だったのだという。

フェンスに囲まれた1キロメートルほどの道

ほかに住むところはない…

2カ所あるパレスチナ側の検問所を抜けると、ようやくガザ。いったい、どんな街なのか――。少しでも情報を得ようと車窓から目を凝らして外を眺めていると、荒涼とした土地に、ところどころ天井や壁がない土色の建物が点在しているのが目に映る。もちろん、イスラエルによる空爆の産物だ。まるで住居として用をなしていない崩れかかった建物だが、それらの壁にはあちこちに布団や洗濯物が干されている。あぜんとする私たちに、男性ドライバーが低い声で言った。

「ほかに住むところはないからな……」

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