中国による鉄鋼の不当廉売に対し、米欧が対抗措置を取ることは十分正当化できる。だが、歴史が証明するように、保護主義がピンポイントの政策に限定されることは、まずない。多くの場合、恩恵を受けるのは政治に近い一部であり、ツケを支払うのは消費者だ。国際競争からの遮断が行きすぎれば、その国は競争力を失い、雇用や経済成長も打撃を受ける。
西側経済はグローバルなサプライチェーンに深く組み込まれている。米トランプ政権ですら、北米自由貿易協定(NAFTA)からの脱退計画を見直さねばならなかった。メキシコからの輸入品の中身は相当部分が米国製であり、高い関税障壁を築けば、米国の雇用もメキシコの雇用と同じくらい犠牲になる可能性がある。高関税によるコスト増はもちろん、値上げにより消費者にツケが回される。
社会人教育の抜本改革が欠かせない
貿易がサービス分野にも浸透していくことは間違いない。たとえば米アマゾンが運営するメカニカルターク(人間が中に隠れていた18世紀のチェス対戦ロボットにちなんだ名称)は、プログラミングなど人力で行う細かな作業を、途上国並みの低賃金で発注可能にした新たなプラットフォームだ。
配車サービスの米ウーバーが明らかにしたように、この種のオンラインサービスには規制が必要だ。だが、インドや中国が抱える雇用問題は巨大であり、サービスの輸出を先進国が取り締まれると思ったら、勘違いも甚だしい。
では、この問題にどう対処すべきか。人々が頻繁に、時として劇的に職を変える世の中においては、主にオンライン学習を通じた社会人教育の抜本改革が欠かせない。所得再分配の強化も必要だ。トランプ大統領が信奉するような、人気取りの伝統的保護政策は、これまでも有効ではなく、今後さらにひどい結果をもたらしそうだ。
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