私がマイクロソフトに、悲観的でない理由 バルマー氏の功績と、次のリーダーの課題

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

バルマー氏退任のニュースに、市場の反応は?  

バルマー氏の退任が発表されると、マイクロソフトの株は前日の終値からおよそ7%上昇した。110万株あまりのマイクロソフト株を保有するバルマー氏は、自分の退任のニュースが約220万ドルの資産増加につながるとは思わなかったのではないだろうか。  

バルマー氏が就任してからのマイクロソフトは、依然としてWindowsやOffice、企業向けのExchangeなどの製品群で堅調に利益を上げる一方、デバイスやライフスタイルのモバイル化、クラウド活用という現在のトレンドを作る部分でその存在感を示すには至っていなかった。  

筆者がメインの環境をWindowsからMacに移行したのは、大学生の2001年だった。それまでデスクトップ型PCを中心に使っていたが、白いポリカーボネイトのノート型PC、iBook(現在のMacBook)に乗り換え、当時Mac向けにしか利用できなかったiPodで音楽を聴くようになった。パソコンだけではなく、複数のデバイスを連携させ、パソコンのデータを持ちだして使う、というスタイルに斬新さを覚えていた。これは後のモバイルコンピューティングの原体験になった。  

Windowsは「3.0B」というバージョンから使い始めたが、結局Windows XPが自分で購入した最後にバージョンとなった。一方で、Windows Mobileのスマートフォンには飛びついた。PHSと大画面のタッチパネルを備えたウィルコムW-ZERO3は、iモードなどのケータイとは違うネットの体験を持ち運べる点に魅力を感じていた。しかし2007年にiPhoneが登場し、翌年日本でも発売され、結果的に筆者が使うデバイスは再びアップルのプラットホームに落ち着き、今に至る。  

モバイルデバイスの時代の到来を確実なものと認識させたアップルに加えて、グーグルやアマゾンといったクラウド企業もデバイスをリリースし、一般のコンシューマーやビジネスの中に、デバイスを軸として「モバイル」「クラウド」のトレンドを素早く展開に至っていない。  

もともとハードウェアとソフトウエアに取り組んでいたアップルや、プラットホーマーがデバイスに参入したグーグルやアマゾンのように、垂直統合でのサービスデザインへ移行しようとするソフトウエア企業マイクロソフトの変化に時間がかかっている。  

今回の株価上昇は「マイクロソフトの変化が加速するのではないか」という市場の期待感によるものだろう。バルマー氏は声明の中で「変化の途中で退任し、より長く努められるCEOが必要だ」としている。デバイスとサービスを提供する企業への移行はこれから拍車がかかることになるだろう。

次ページ将来への明るい材料
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事