ジリ貧の「ビジネス書」市場に見える微かな光 安易な企画は敬遠ぎみ、本格派が求められる
2017年の今になってもビジネス書は何だかんだ男性著者が多いのですが、女性管理職が当たり前のような時代が来れば、そのニーズに合ったビジネス書作家が求められるようになります。第2、第3の勝間和代さんが必ず現れることでしょう。
展望3 本格派の時代
時代は本格派を求めています。
そのニーズに対応した先駆けである『もしドラ』と同じように、古典や名作をベースにしたダイジェスト本が売れているのは2010年代の大きな特徴です。たとえば、『「超」入門 失敗の本質』(鈴木博毅著、ダイヤモンド社、2012年)。これは野中郁次郎ほか著『失敗の本質』(中公文庫)を現代のビジネス文脈に置き換えて解説を加えたもので、読者のニーズを的確にとらえていました。
ビジネス書のコミック化や図解化が流行っているのも、2010年代の特徴です。こちらも『まんがでわかる7つの習慣』(宝島社)や大前研一さんの『企業参謀』(ダイヤモンド・タイム社、1975年)をベースにした『超訳・速習・図解 企業参謀ノート[入門編]』(プレジデント社、2012年)のように、本格的な作品をかみくだいたものが目立ちます。
逆に、最初から柔らかい内容のものをコミック化した場合、売れ行きは厳しいようです。拙著『さおだけ屋~』のコミック版もまったく売れませんでした。やはりコミック化に向くテーマは、「いい内容なんだけど難解」なものです。『孫子』や『アルフレッド・アドラー』など、真正面から取り組めと言われたら逃げ出したくなるようなものも、コミックならばスッと入っていけるので、新たな読者層の開拓につながります。
本格的なものをやわらかくかみ砕いたものだけでなく、タイトルも内容もド本格なものを求めるニーズも高まっています。
たとえば、2015年のベストセラー、トマ・ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)は経済学者のアカデミックな大著で700ページにも及び、定価は本体価格5500円と高額であるにもかかわらず、雑誌などのメディアがこぞって特集を組むなど、一大社会現象になりました。
『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著、河出書房新社、2016年)もハードな本ですが、「ビジネス書グランプリ2017 リベラルアーツ部門 第1位」や「ビジネス書大賞2017」に輝いた話題作です。
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